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2007年10月30日 (火)

対テロとの戦い:「新しい戦争」の時代

■グローバルな戦いから、日本は、一歩後退するのだろうか・・・。

<海自補給艦>「最後」の洋上給油

10月30日1時3分配信 毎日新聞

【アラビア海北部・高橋宗男】海上自衛隊の補給艦「ときわ」は29日午後(日本時間同日夜)、中東のアラビア海北部で、米国が主導する「対テロ戦争」の有志連合国の艦艇に対し、最後となる見通しの洋上給油を実施した。海上自衛隊は01年12月からインド洋で補給活動を続け、今回を含めこれまでに11カ国の艦船に794回、計約49万キロリットルの給油を実施。テロ対策特別措置法が11月1日に期限切れを迎えるため、新法の成立まで中断されることが確実な情勢となっている。中略・・・給油活動を指揮した尾島義貴・第6護衛隊司令は「各国元首からの評価もあり、我々の活動が間違っていなかったと感じている」と自負を示した。さらに「この海域は日本のエネルギー確保にかかわる重要なルート。ここに日本の自衛艦が存在することは重要だと思う」と強調した。以下、略・・・、引用終わり

引用元:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071030-00000001-mai-pol

■テロ特措法の期限が切れることから、この度、日本の洋上活動は中断される。もう、これまでにテロ特措法関連は数回エントリしてきたので、今回は、テロリズム要因と対策について考える。(かなり手抜きです。すいません)

■以前のエントリの補足程度のものである。まず、こちらのエントリ(国際テロリズムと日本)を参照願いたい。又、雪斎殿のテロ対策の意味も、猛獣と毒蜂を例えに使いながら大変わかりやすい。

以前のエントリと重複するが管理人のテロリズムの定義を明記しておく。

「恐怖をおしつけるために、ある支配的な形態、思想に対して、(計算された)無差別な暴力行使あるいは、その脅し」と暫時的にしておく。

ただ、あくまでも政治的にも学術的にもコンセンサスがとれているわけではない。

また、テロは恐怖感を押し付けることが目的なため突発的で大規模なものになりやすい。

■アメリカがアフガン・イラクで混迷しているのは、多々問題はあるのだろうが、従来型の軍事作戦もそのテロ対策の一部ではあるが効果に限界がある。アメリカというのは単純な所も兼ね備えていて、湾岸戦争がヴァーチャル・ウォーと言われたことからも、RMAの進歩からもエアパワーで、ピンポイントで破壊すれば解決という楽観的な所が多いにあったのだろう。確かにタリバン政権、フセイン政権は、容易に破壊できたのかもしれないが、軍事戦略の最大の目的はコントロールすることにある。ようやく反省の上で、ソフトパワーの併用を始めるようだが、遅いことは言うまでもない。このような批判を主にしているのが、ロバート・ペイプ氏などである。(Amazon)そして、又、国家再建となるとかなりの調査・研究に基づく政策が必要である。日本でさえ、国際社会復帰には、およそ、7年を費やしている。

■テロ対策の予防という観点から言えば、グローバル化が進む中で、人・モノ・カネなどの規制、監視、警備、警護の強化や、インテリジェンスに基づいて容疑者の逮捕などが具体的にあげられる。これら日本では、テロ対策要員が一元化されているわけではない。管理人は、テロ対策の一元的な組織と自衛隊と警察の中間あたりの特殊部隊が主に任務にあたってはどうかと考える。(情報の集中と指揮命令系統が簡素化するとととも、軍隊ほど重厚でなく身軽で警察より特殊能力がある要因が好ましい)

さらに、テロ実行犯、テロ組織を特定し法的対処、軍事力の行使などがある。特に国際テロ・グループなどの場合は、日頃からの関係各国との外交強化、国際機関への働きかけが重要なことは言うまでもない。

■以上は言わば「対処療法」である。根本的な原因は複数の要素からなり断定できない。

貧困、抑圧、非民主的、統治の崩壊などは背景レベルであって根本原因のレベルではない。自爆テロにせよ、テロ行為の動機も一般化できないが正義への使命感であったり組織に対する満足感や快感などが主であろう。

■防衛大学の宮坂直史氏(こちらが参考になるだろう:テロ対策の4段階)によれば、テロとの戦いは「新しいトータル・ウォー」であると主張する。その意味は、対テロ戦が総合的な取り組みが必要であるということである。そしてそれは今やグローバルに多面的な広がりをもつのではないだろうか。

Foreign Affairsに、ブルッキングス研究所 上級研究員 フィリップ・ゴードン氏が次のような論稿を寄せている。(Can the War on Terror Be Won?

一部、抜粋する。

Finally, there are good reasons to believe that the forces of globalization and communication that have been unleashed by changing technology will eventually produce positive change in the Middle East. This will especially be true if there is successful promotion of economic development in the region, which would produce the middle classes that in other parts of the world have been the drivers of democratization. Even in the absence of rapid economic change, the increasingly open media environment created by the Internet and other communications technologies will prove to be powerful agents of change. Although only around ten percent of households in the Arab world have access to the Internet, that percentage is growing rapidly, having already risen fivefold since 2000. Even in Saudi Arabia, one of the most closed and conservative societies in the world, there are over 2,000 bloggers.

非常に全体を通してリベラルな見解なのだが、つまり、現状のアメリカの対テロとの戦いへの取り組みを述べ、その目標と終わりがあるのかという疑問符を投げかけ、グローバル化と情報(国際世論、国内世論など)によって、中東諸国が自ら変わらなければならないしそれが可能である。そのためにはアメリカは冷戦期のようなイデオロギーに固執せず、サポートできるよう中東諸国もだがアメリカも変わらなければならないという趣旨の論文である。

■テロ組織や、テロ行為主体というのは意外とパブリシティを必要としている。そしてテロと向き合うにも、国民の国際社会の一致した支持が必要である。上記引用にもあるように、グラス・ルーツへのパブリック・ディプロマシーと国際社会の一致、新たな枠組み作り(条約の批准・締結など)のための広報外交が重要である。確かにアフガニスタンでのオペレーションは対テロ対策の一部ではあるが、日本にとって戦略的価値が大きいだけに非常に政争の具にされてしまい残念である。

■最後に「対テロ戦争」やテロとの取り組みでアメリカを批判することは、容易ではあるが、テロリスト=アル・カイーダや、イスラム過激派というだけではない。又、対テロとの戦い=イラク、アフガニスタンというだけでもない。国際テロリズムへの取り組みにおいて最も情報を集め多くの研究を重ね政策提言しているのはアメリカである。アメリカのやり方には問題は多々あるのは何度も言っているが、では日本は対外的、対内的に、何をしているのだろうか。そして何が出来るのだろうか。

*今日の1冊:『日本はテロを防げるか』 宮坂直史著 ちくま新書

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コメント

 いよいよ新しい職場ですね。
 ところでプロフィールの写真ですが、これがアメ帝国のforrestalさんの写真??あの時代に写真の割りに写りがいいですね??
 日本は軍事や地政学を無視する傾向がありますよね。アメリカこそテロに関する情報が集積しているのであって、日本はほとんどゼロですから、悲しいくらい危機感が欠如していますよ。さらに悪いことに・・それを政争の具に用いてしまって・・
 既読かもしれませんが・・エコノミスト誌にもテロとの戦いについて面白い話がありありました。
当方が目を通すTOPICは必ずWEB上にあるんですよ。3年も購読予約していまして・・かなりショックだなぁ。しかも最近英語を読むのが辛いのなんの・・(笑)・
http://www.economist.com/world/international/displaystory.cfm?story_id=10015844

投稿: SAKAKI | 2007年10月31日 (水) 09時18分

SAKAKIさん

いつもコメントありがとうございます。今日は、インフルエンザの注射を打ってきました。明日から、新しい職場です。

トップページの写真も変えました。アメ帝の初代国防長官ですね。

戦前は地政学や大陸系から、海洋系まで日本も学んでいます。軍事に関しては、戦後の反省で、タブーにされていた時代が長かったですね。今でも、日本の大学では本格的に学べません。
それでも、ここ10年ぐらいでしょうか。かなり軍事にもオープンになりつつありますね。

エコノミストを3年購読ですか、凄いですね。僕は、まず、1年購読で、様子を見ます。

記事ありがとうございました。拝読しました。
正直、対テロ対策は、全ての局面で、まだまだ手探りなんですよね。

コメントありがとうございました。

投稿: forrestal | 2007年10月31日 (水) 22時24分

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