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2007年10月11日 (木)

小沢一郎論文に対する所見

■11月号、論壇誌『世界』に寄稿された、小沢一郎氏の論文の所感・所見を述べる。

民主党の小沢代表が月刊誌に寄稿 国連決議に基づき、活動参加に前向き 2007年10月08日 23:04 発信地:東京

【10月8日 AFP】インド洋での海上自衛隊の給油活動継続に反対する民主党の小沢一郎(Ichiro Ozawa)代表は、9日発売の月刊誌「世界」に寄稿した論文で、アフガニスタンで活動する国際治安支援部隊(ISAF)など国連決議に基づく活動への自衛隊派遣に前向きな姿勢を示した。

 同論文は、小沢氏自身が海上自衛隊の給油活動継続に反対する理由を説明したもの。この問題をめぐっては与野党で攻防が続いている。

 小沢氏は論文の中で、「国連の活動に積極的に参加することは、たとえ結果的に武力の行使を含むものでもむしろ憲法の理念に合致する」と述べている。産経新聞の引用によると、アフガニスタンで北大西洋条約機構(NATO)が主導するISAFや、スーダンでの国連平和維持活動(PKO)へは「政権を取れば、参加を実現したい」と明言している。以下、略・・・ 引用終わり

引用元:http://www.afpbb.com/article/politics/2295126/2223367

■管理人は、『世界』という論壇誌は、滅多に読まないのだが、この度は、前回のエントリ(小沢代表の国連至上主義)でも触れた、小沢代表の憲法解釈、国際法(国連)解釈、世界情勢への認識に興味があり、通読してみた。

率直な感想を言えば、殆ど内容がない。あまりにも極端で、無理があり過ぎるのである。

雪斎さんもエントリ(小沢一郎の論理)されているが、一文、引用させて頂けば、「小沢論稿の意義は、「世界」に載ったという一事かもしれない」 管理人も同感である。

確かに、紙面6ページ足らずの国連政務官宛ての寄稿文では、詳細に論じることは出来ない。しかしながら、あまりに、その憲法論、方法論において、具体的かつ現実的な記述が、見受けられない。又、根拠、希薄である。

■以下、①日米同盟と国連中心主義 ②憲法論 ③それらを通じての国連の平和活動について、まだ、発売間近ということもあり、極力、引用は控えて、所見を述べる。

まず①からだが、小沢氏は、日米同盟と国連中心主義は、両立可能な上、まったく矛盾しないと述べる。また、この両立を可能にすることが、本来あるべき日米同盟を築きあげることになるとも述べている。

評価したい点は、2者択一的な考えではないことである。が、そもそも、国連システムの枠内においては、同盟も両立可能性を持つが、同盟の機能とは、その射程を主に、国連システムの外に置いている。その内部、又、内外で齟齬が生じた場合は、どちらかが優先されることになる。もう少しソフトに言えば、日米の利害と国連の活動(利害)が一致すれば、問題はない。が、日米の利害と国連の活動(利害)とが一致しなければ、両立は難しい。

結局、ミニマムリスク・コスト、マキシマムベネフィット分析に基づく判断になるだけだろう。

又、現状の日米同盟を認識して、それをどう両立させるのか、具体的な方法の記述はない。また、同盟の形態も多様であり、「本来あるべき」とは、どうあるべきなのか言及がない。民主党の政策提言にある「対等」な関係であろうか。これは以前にエントリしたので、参照願いたい。(民主党の外交政策を考える

要するに、段階的に、働きかけなければ、また、その内容、タイミングなども柔軟な政治判断が出来なければ、到底、無理な話である。それを行うためには、日本外交には、いくつものハードルがある。

■次に②の憲法論であるが、はじめのAFPの引用にもあるが、国連(安保理)のオーソライズがあれば、自衛隊の海外派遣は可能であり、結果、武力行使を伴っても、日本国憲法に抵触しない。もう少し、詳しく見れば、国連の平和維持活動は、国家の主権である自衛権を超えたものである。よって、憲法9条に抵触しないということになるという解釈である、。国連の指揮下に自衛隊を移譲すれば、国権の発動ではなくなるというロジックであるが、そもそも、日本は、これも先のエントリーで書いたが、憲法が国際法より上位にある。近代国家の持つ自衛権と国連の平和維持活動の関連性において、管理人は、憲法を一般的に解釈すれば、国連(国際法)が下位に置かれる。(つまり、国連とは、主権国家から構成される国際機構であり、主権国家以上の権威体ではない。)管理人もこの立場をとる。又、国連のオーソライズがあっても、国権の発動たる側面は残る。又、自国の軍隊を、国連にまかせてしまえというのは、あまりに、無責任な対応である。又、自国軍隊を国連に完全委任させるだろうか、つまり、国連軍の話であるが、そんな主権国家は、現状、存在しない。具体性、実現可能性が極めて低い極論としか言いようがない。

民主党 長島昭久議員のブログが参考になるだろう。付記しておく。(参照

長島議員は、このようの小沢氏の見解を理念型だと言っているが、そうあることを願いたいが、管理人から見れば、かなりの持論を踏まえた、希望的楽観論である。(日本の国益につながる、合理的、戦略性が見受けられない)

■最後に③だが、アフガニスタン情勢は、エントリ予定だが、ISAF派遣は、給油・給水より危険である。ここにきて、小沢氏も、軍事部門に関しては慎重になっているようだが、(唐突に)ラディカルなことをしては、衝撃が大きい。それゆえ、管理人は、以前にも書いたが、ステップになるなような形なら、派遣も歓迎する。ただ、上記の憲法解釈論を振りかざしているようでは到底、無理である。これまで、法治国家として、憲法とのせめぎ合いの中で、苦心して、自衛隊の海外への人道復興支援を行ってきた。

極端な憲法解釈で、国内世論に配慮せず(戦後、日本が築き上げてきた平和主義)、ISAFに派遣し、武力行使を行っても憲法に抵触しない論理には、あまりにも無理がある。

結局、この論文の内容は、小沢一郎氏の現代版『普通の国』論でしかない。

テロの温床が貧困のみであるとは断定できないが、その背景のひとつではあろう。アフガニスタンでは、現状、タリバンや、反政府勢力・組織との戦闘が行われており(すでに、和解を申し出ている段階だが)、同時に、民生部門での、難民救助や、人間の基本的ニーズを満たせるよう、ダブル・トラックで行われている。

ただ、対外的には、まだ、反応を確認していないので、推測になるが、欧米の悪評を低減させる可能性はある内容である。少なくとも、どういう論理、方法論かは、定かでないが、「積極的にテロと闘う姿勢」というメッセージは、確認できる。

管理人は、民主党には、もっと、繊細で、きめ細かいアイデア・政策を期待する。

ただ、外交、安全保障政策を政争の具にすべきでないが・・・。

ぜひ、皆様も、一度、目を通して頂きたい。

参考・参照(引用):2007年11月号 『世界』 岩波書店 (p.148~153)

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コメント

 小沢氏の安保政策をめぐる論議の中で国連について論じる際に国連安保理常任理事国の拒否権はアメリカだけでなく中ロにもあるという点に多くの人が想像力を及ぼそうとしないのが不思議でなりません。
 何も安保理における常任理事国の拒否権は米―イスラエル関係のためだけにあるわけじゃないんですけどね。

投稿: bystander | 2007年10月12日 (金) 12時45分

bystander様

コメントありがとうございます。
仰る通りで、中国、ロシアの今後の動向次第ですが、P-5の思惑、利害が絡めば、拒否権(veto)は、行使されますね。私の考えは、悲観的です。
国連安保理決議の殆どが、妥協の産物でしょう。

それならば、国連安保理改革をもっと熱心に、訴えてもいいはずです。まあ、日本の影響力は、しれてますが。

多くの人も、国連幻想に取りつかれているとは思いません。それほど、初心ではないでしょう。

国連の集団安全保障が機能してこなかった、機能していない原因は、アメリカだけでなく、5大国、各国にその責任の程度はあれあります。

特に、中国、ロシアが、日本の国益にも沿うような決議を容易に出すとは、思いません。

また、国際の平和と安全のための決議についても同様です。

コメントありがとうございました。

投稿: forrestal | 2007年10月13日 (土) 21時12分

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