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2007年9月 4日 (火)

昨今のイラン情勢を考える

■中東情勢が緊迫する中、まず、イラクや、アフガニスタン、レバノンなどに触れる前に、イランについて、エントリする。

イラン:革命防衛隊最高司令官を交代 後任はジャファリ氏

 【テヘラン春日孝之】イランの最高指導者ハメネイ師は1日、革命防衛隊の最高司令官に、ヤヒヤ・サファビ氏に代えて同隊幹部のアリ・ジャファリ氏を任命した。サファビ氏は最高指導者の特別軍事顧問に就任した。最高司令官の交代は97年9月以来だが、理由は不明。イラン国営メディアが伝えた。

 米紙ワシントン・ポストは先月14日、ブッシュ米政権が革命防衛隊の「テロ組織」指定を検討している、と報じた。指定されれば主権国家の軍隊としては初めて。これに対し、サファビ氏は地元メディアを通じ「米国の圧力に対し、決して沈黙はしない。米国は将来、重い一撃を食らうだろう」と報復の可能性を表明していた。以下、略・・・

毎日新聞 2007年9月2日 18時15分

■これまで、イラクに関しては、数回エントリしてきたが、イランについてははじめてである。

アメリカのイランに対する戦略を考えたあと、日本の役割をコメントする。

まず、イランだが(外務省のページ参照1とwiki参照2が参考になるだろう。)細かな歴史は、追わないが、現在、二つの安保理決議(1696と1737)が出されている。これは、言うまでもなく、イランの核開発問題(IAEA査察など)に対する決議案である。安保理決議1696の分析と北朝鮮への決議の比較は、カワセミ殿が詳細なエントリをされている。参照願いたい。(イラン核開発問題安保理決議

■アメリカとの関係で言えば、これも、簡潔に書くが、1979年、カーター政権期の在アメリカ大使館人質事件以降、国交は断絶し、多くのアメリカ人は、今でも、よい印象をもっていない。ジョージ・W・ブッシュ大統領の「悪の枢軸(evil of axis)」発言は、あまりに強烈なものであるが、それは、イランが単に、アメリカが支援、民主化を促していた、パーレビ国王を追放したからではない。その後、ホメイニ師を最高指導者とする神政国家を目指し、つまり、「中世的な非世俗的国家」を、イスラム原理主義者が、革命のもと、現在も遂行していることにあるからである。これは、アメリカの掲げる理念とは相いれないものである。それ以降、西側諸国の大使館は、日本、微妙であるが、トルコ以外にはない。(ちなみに、現在の最高指導者は、ハメネイ師である)

又、クリントン政権期には、テロ支援国家に指定し、イラン・リビア制裁法の更新を続けている。

■このイランの核開発問題であるが、イラク戦争以降、急速に加速した背景には、アメリカが、(北朝鮮、シリア、リビアもそうであるが)サダム・フセインを打倒する中、アメリカからの攻撃を防ぐためには、2つの選択しか、用意しなかったためである。これは、アメリカの大きな計算違いであろう。つまり、国家防衛(現体制維持)のためには、強硬的に核保有に踏み切るか、妥協的に、核関連物質を放棄するかしかない決断をせまったためである。

■もう少しイランを見ておきたいのだが、ハタミ政権は、非常に改革的であった。この時期に、アメリカが支援していればと思うが、仕方がない。その後、ジョージ・W・ブッシュ政権誕生後は、より、過激になり、強硬保守派のアフマディ・ネジャド氏が大統領に選ばれている。当然のことながら、安保理決議には、履行不十分であり、ヨーロッパ3カ国、英・仏・独の説得もうまくいっていない。フランスなどは、巧みに石油利権を狙っているだろうが、中国、ロシアも同じことが言える。イランの資源(石油)をめぐって、あまり大きな行動はとらないだろう。

■昨年の『論座』12月号に、現在、CFRの議長を務める、リチャード・ハース氏がなかなかおもしろい、分析をしている。「侵略を押し返すという必要にせまられて介入した、第一次湾岸戦争が中東におけるアメリカの時代の幕を開け、ワシントンが選んだ、第二次湾岸戦争(イラク戦争)が唐突にアメリカの時代を終わらせた」とは、非常に示唆に富むレトリックだが、今後、おそらく、中東で、アメリカは、影響力を保持し続けるものの、そのパワーは、相対的に低下するだろう。又、その他の諸国(EU諸国、中国、インド、ロシアなど)の政策に大きく制約されるだろう。又、最近では、アメリカの著名なオフェンシブ・リアリストに、国際社会が批判、非難するなか、無意味、無批判にイスラエルを支持、擁護することは、かの地域における、戦略環境を厳しくし、外交オプションを減らすものであるという批判もある。

■では、アメリカは、イランに対してどうすればいいのだろうか。引用、毎日の記事とも重なるが、Finacial Times紙、関連する記事があった、付記しておく。(参照3/参照4

参照3に関しては、アフマディ・ネジャド大統領がアメリカに強硬的な声明を発表してる内容が主であり、参照4は、革命防衛軍のリーダーを変えた内容である。。

(尚、イランの軍隊組織は、正規軍と革命防衛隊の二重構造からなり、それぞれが陸・海・空軍を保持する。防衛隊は79年のイスラム革命直後に設立された精鋭部隊で総兵力10万人余。)

恐らく、アメリカの次期大統領選を睨みながら、北朝鮮のように、強硬にゴネ続ければ、アメリカは、譲歩する。具体的には、革命防衛軍のリーダーが穏健派になったことは、少なくとも、この「テロ組織」指定の回避は、狙っているだろう。このあたりは、成功するかはともかく、イランの2枚舌外交になるだろう。問題は、アフマディ・ネジャド氏は、革命防衛軍出身だが、彼の求心力と国内の改革派勢力をどう抑えるかが、イランにとっては、キーポイントであろう。

アメリカとしては、何としてもイランの核保有は避けたいところである。かの地域における地域機構の活性化と、フォーラム、サウジアラビア、エジプト、トルコあたりに中心になってもらい、和平合意構築への働きかけ、外交交渉での妥協も必要であろう。(こちらは、ジョージ・W・ブッシュ大統領の記念式典での声名である。参照5)しかしながら、アラブ諸国というのは、イランの政治体制を批判できるだけの民主的な制度を構築していない。王政で、きりまわしているのが現状である。又、トルコもヨーロッパ寄りであると簡単に、アラブ・ナショナリズムを駆り立てて終わりそうだ。ただ、核保有による、イランの勢力が拡大する中東は、周辺諸国も、国際社会も望んでいない。上記にも書いたが、アラブ独自の活性化、欧米の粘り強い外交交渉に期待したい。現状、アメリカがピンポイントで、単独で、イランを攻撃することは、考えづらい。これは、アメリカの中東での戦略環境の厳しさ(イラクとアフガニスタン)、国内事情(分割政府、大統領選挙選前、国内世論)、ジョージ・W・ブッシュ大統領自身、及び、ネオコンの求心力の著しい低下が理由である。主な軍事的な理由に絡めたものは、アメリカのシンクタンク、ワシントン近東政策研究所のアンドリュー・エクセウム氏が述べている。付記しておく(参照6

兎に角、非常に難しいことは事実である。たしかに、成熟した民主国家同士は、戦争しないのかもしれないが、その成熟した民主国家を創ることは、容易なことではない。

■今回は、まず、イランを軽く取り上げてみた、地政的にも、イラク、アフガン、パキスタンと接し、今後の中東問題では、必ず、絡んでくる国家である。唯一、大使館を持つ、日本は、徹底的に、ソフト面で、アラブ周辺国をサポートし、関係主要国などの調整役に徹する他ない。かの地域に石油の9割近く、イランには、全体の15%近くを依存している日本にとっても、極めて重要な問題である。

・今日の1冊:『現代アラブの社会思想』 池内恵著 講談社現代新書                                      

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コメント

トラバ受け付けました。(毎日新聞の記事全文コピペはちょっとまずいが・・・)

コメントしたいところはたくさんありますが、今忙しいのでやめておきます。^^;

細かいところを除けば、勉強のあとが見られてなかなか面白い記事を書かれていると思います。私もIR専門なので、どうぞよろしく。

投稿: Niki | 2007年9月 5日 (水) 11時46分

Niki様

はじめまして、お忙しい中、コメント、TBの受け付けありがとうございます。記事、全文コピペの引用は、確かに、ちょっとまずいでね・・・汗。

ご指摘を受け、一部、省略し、必要な部分のみの引用にさせて頂きました。あまり変わりませんが・・・。

ただ、このブログは、一切の政治活動、それに準じる活動、又、商用、営利を目的とはしておりません。あくまでも、個人の私的利用、個人の趣味の範囲です。このことは、『本ブログの趣旨』にて、告知しております。上記にも記しておりますが、あくまでも、引用の範囲内で、使わせて頂いております。

ブログという性質上、ディテイルには、あまり、踏み込めません。まあ、私の勉強不足もありますが。

正直、中東・イランについては、詳しくありませんし、たいした勉強してません。専門分野ではなかったですから。(専門領域も、グダグダですが・・・笑)

ですので、中東・イランを専門にIRsをなさっている方から見れば、言いたいことは、たくさんあると思います。また、お時間があれば、コメントしてくださいね。

どうぞ、今後ともよろしくお願い致します。
コメントありがとうございました。

投稿: forrestal | 2007年9月 5日 (水) 19時36分

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