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2007年8月22日 (水)

2つの朝鮮、1つの経済?

■韓国では、次期大統領選が12月に控えている。自然災害(水害)を理由に、南北首脳会談は、延期とされたが、アメリカのCFRの分析を紹介して、私見を述べる。

韓国大統領選、ポスト盧で、対「北」政策は変わるか

ポスト盧武鉉はだれになるのか。韓国の大統領選挙の結果、対「北」政策などに変化は起きるのか。

 12月19日の大統領選に向け、野党ハンナラ党が実施した予備選で、李明博・前ソウル市長が朴槿恵・元党代表に競り勝ち、同党の大統領候補に決定した。

 ハンナラ党は、保守勢力を結集して10年ぶりの政権奪還を目指している。保守勢力は、過去2回の大統領選で、世論調査で優勢が伝えられながら、最終局面で分裂し、敗北した。

 今回も、予備選の過程で、李、朴両陣営は激しい中傷合戦を展開した。李候補は、大手建設会社社長や市長在職中の私有財産形成や許認可権をめぐる疑惑を追及された。朴元代表は、私生活を詮索(せんさく)され、父親の故朴正煕大統領のクーデターや独裁の責任まで問いただされた。

 しこりを残さず、党内団結を維持できるかどうかが大きな課題だ。

 李候補は、予備選では疑惑を否認したが、これから与党陣営から執拗(しつよう)な攻撃を受けるだろう。

 盧武鉉政権の人気低迷で分裂状態だった与党陣営は、新勢力が旗揚げした民主新党に旧勢力が合流して再び一つの傘の下に集まった。大統領候補を決める予備選を10月に行い、ブームを盛り上げ、余勢を駆って勝利を狙う構えだ。

 南北首脳会談は、北朝鮮の水害で10月初めに延期された。盧政権が大統領選の道具に使う可能性は一層強まる。

 韓国大統領選で、対「北」政策は、与野党対決軸の一つだ。

 与党陣営は、盧政権が金大中・前政権から受け継いだ「太陽政策」を発展させるとしている。南北首脳会談で北朝鮮への大規模経済支援を具体化することで南北和解を演出しようとするだろう。

 これに対し、ハンナラ党は、盧政権の対「北」支援を、「無分別で無原則な対応」と批判している。元来、北朝鮮に支援に見合った措置の履行を求める「相互主義」に力点を置いてきた。融和路線をとる与党陣営よりは厳しい姿勢だ。 以下、略・・・

(2007年8月22日1時20分  読売新聞)

■韓国では、次期大統領選が、12月に控えている。それを巡って、もうすでに、選挙選は、実質、始っているわけだが、引用した読売の記事における、管理人の関心事は、以下である。

与党陣営は、盧政権が金大中・前政権から受け継いだ「太陽政策」を発展させるとしている。南北首脳会談で北朝鮮への大規模経済支援を具体化することで南北和解を演出しようとするだろう。

 これに対し、ハンナラ党は、盧政権の対「北」支援を、「無分別で無原則な対応」と批判している。元来、北朝鮮に支援に見合った措置の履行を求める「相互主義」に力点を置いてきた。融和路線をとる与党陣営よりは厳しい姿勢だ。

もちろん、現在も、北朝鮮は、6カ国協議の合意に従った、次なる措置が求められている。当然、この度の会談も核問題に注目が集まるわけだが、今回は、それだけでなく、上記にも書いたが、大統領選に向けたパフォーマンスと経済の一体化に向けての動きにも注目が集まっている。

韓国世論も複雑のようである。支援の重要性を説きながらも、その見返りがなければ、メリットがないという見解が多いようだ。

■ここで、CFR:イ・ハドソン・テスリク氏の分析を紹介する。(Two Koreas, One Economy?) 以下、管理人の稚拙な要約です。

この分析は、まだ、延期発表前のものであるが、ワシントンの注目は、核問題は、無視できないが、より、経済の特化(変化)にも、注目しているというものである。

それは、会談前に、韓国の公筋から、より詳細な北朝鮮の社会インフラへ(学校や病院など)の投資プランが、単に従来までの食糧などの人道援助だけでなく、明るみにでたからである。ただ、核問題を残したままの、インフラ投資は、北朝鮮に得なだけであるという批判もある。

しかし、この経済投資の増加を強調することに着目することは、現在進行中の1民族1国家(南北統一)路線を加速させるかもしれない。その背景には、北朝鮮は、ここ数十年の経済危機から、段階的に、小規模な貿易、取引のやりとりの制限・限界を公開している。(解除に向かっている)

今では、少しではあるが、海外投資を招き入れている。

だが、厳しい見方をすれば、このような、経済的なより密接な交流という理由からではなく、金正日氏は、大統領選を利用し、ノ・ムヒョン大統領を抱き込むことで、6カ国協議において、優位に進める意図があるのではないかと、警告もしている。

ワシントンとソウルでは、すでに、この会談の課題について、論争しており、例え、ピョンヤンが、ほんのわずかばかり、経済的に自由化しても、ヘリテージ財団のインデックスでは、157位までであると、米韓の温度差を感じさせている。

■まず、この度の会談は、またも延期になったわけだが、実際、行われるか現状、判断が難しいが、恐らく、韓国の政局の状況をみての、北朝鮮の決断になるだろう。実際、こういう事実がある。(東亜日報の記事

この記事にもあるとおり、歴史的な会談、恒久平和、南北統一へ向けてというものよりも、北朝鮮も、最いえば、韓国の大統領選に向けての両国の利害、思惑が見て取れる。

管理人の見解は、テスリク氏の後半(最後の部分)に近い。最も、より詳細に韓国経済の分析も必要なのだが。。。

北朝鮮にすれば、6か国協議で、韓国を味方につけておくことや、経済的な支援が得られれば、メリットばかりである。

韓国、ノ・ムヒョン大統領にしても、自己(与党)の求心力、国内外へのアピールが出来れば、それに越したことはない。

先に結論的になことを言えば、アプローチ次第ではあろうが、政治的駆け引きの側面があまりに強い。

そもそも、管理人は、「太陽政策」は、機能的統合であると認識している。もちろん、これは、後世の実証的な研究を待たねばならないが。そのような視点から見た場合、経済的な統合に至っていないのは、明白である。そのための、インフラ設備投資という考えもあるが、これまでと同様のアプローチでは、ただの一時しのぎの「支援」で終わる。

ピーターソン国際経済所のノーランド氏は、中朝の商業取引という市場経済の原則に従った方が、北朝鮮の経済自由化と改革には、韓国の支援ベースアプローチよりましであるとも述べている。管理人もまだ、そう思う。つまり、如何にして、北朝鮮に開放性、透明性のインセンティヴを与えていけるかが、最重要課題ではないか。もちろん、核保有国である以上、その脅威を見据えつつ、拡散は、最も懸念しなけれいけないが。(参照

現状、「北朝鮮を攻撃せよ」「レジーム・チェンジを強硬せよ」などという見解は、リスクとコストしかしない。又、そんなことは、日本一国ではできない。ただでさえ、孤立化しつつあり、影響力を行使できずにいる。

マーケットや、投資家は、恐らくもう、このウォン高を見れば、買いに走っているのではないだろうか。

■また、韓国の大統領選は、別の機会にエントリする。

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コメント

>ピーターソン国際経済所のノーランド氏は、中朝の商業取引という市場経済の原則に従った方が、北朝鮮の経済自由化と改革には、韓国の支援ベースアプローチよりましであるとも述べている。

韓国から見ると、そのアプローチでは中国と北朝鮮が経済的に一体化してしまい、北朝鮮を中国に取られるのではないかという懸念があるのでしょうね。
だからあせって援助攻勢をかけようとしているのですが、そこを金正日に見透かされて利用されるのでしょう。

ただ、自分のブログでも取り上げたのですが、韓国も最近はかなり経済的に苦しくなっているように思えます。特に経常黒字の急減と短期外債の急増、そして不動産バブルが頭打ちになってきてることは問題でしょう。
もし韓国が再び経済危機に陥り、日米が支援する状況になったならば、韓国も両国の意向に背いてインフラ投資を続けることはできなくなるでしょう。
そうなると中朝の経済関係ばかりが深まり、それは南北統一の障害になっていくと思います。

北朝鮮問題において、韓国経済の抱える問題は見落とされがちな要因なのかもしれませんね。

投稿: Baatarism | 2007年8月23日 (木) 12時25分

Baatarismさん

いつもコメントありがとうございます。即レスみたいですいません・・・笑

ご存じの通り、中朝の経済的相互依存度は、極めて高いですね。まあ、中韓の依存度も高いのですが。北朝鮮の行く末は、まだ見えませんが、経済的な潜在性は、高い方ですから、取り込みに掛かりたいでしょうね。御説にもあるとおり、韓国は、かなりの懸念がありますね。ジレンマのような状態でしょうか。その牽制的な意味合いもこめて、(それだけではないのですが)、一応、米韓合同の軍事演習をしてますね。ただ、この度の会談の話も明らかに、大統領選を利用してやろうという金正日氏の方が、上手ですね。
Baatarismさんのエントリもリンクさせてもらえばよかったですね。申し訳ありません。

コメントで頂いた上記に加えて、3大大手が現状、頭打ち、中小に関してはかなりの厳しい状況、ソウルを中心とする、不動産バブル、また、若年層の高い失業率(8%ほど)、技術の向上鈍化、シェア不足、日本型をロール・モデルにやってきましたから、昨今では、2極化と、少子高齢化が、日本以上に早いスピードで進んでますね。

このあたりは、(本物)の経済学者にしっかり分析してほしいところなんですが。。。

ただ、この支援には、二つの見方があって、韓国が自国経済が苦しいので、接近して、突破口を見出そう、つまり、北朝鮮の資源や、安価な労働力の確保などを占有しようという見方も出来ますが、とても、そのような戦略性のあるアプローチには思えません。むしろ、上記にも書いた通り、利用されてるだけに見えます。この支援に対する、明白なメリットが見えてきませんからね。

なんだかんだ言っても、やはり経済なんですよ。軍事的脅威や文化的脅威も重要ですが、この東アジアの国際経済の相互依存度とそれに伴う、敏感性と脆弱性に対する備えが出来ていないと、これは、中国経済の失速も含めてですが、日本には、おおきな脅威ですね。

コメントありがとうございました。

投稿: forrestal | 2007年8月23日 (木) 13時08分

 Baatarismさんの溜息通信に韓国経済の設備投資復活(重工・造船)の兆しありとコメントしたSAKAKIです。
 李明博氏は大阪で生まれた?という話ですよ。

>「太陽政策」は、機能的統合
とはいえ、遥かなる道のりですよね。かつて太陽政策で締め付けていたのが、いまは単なる延命措置になっているような・・。
 ウォン高は、中国の工業団地で生産したものを、韓国経由で輸出する「中継ぎ貿易」によって付加価値をつけていたので、黒字が定着すると見た向きが買っていたようですね。これって激しい空洞化だと思うのですけど・・。
 この「中継ぎ貿易」が整理されてきたのでしょう。昨今の国際収支悪化をどう読むかでしょうね。まさか北朝鮮に投資しているから悪化しているのか??専門的な分析をしてもらいたいです。
 景気がいいのも本当でして、韓国人観光客がたくさん来ていますが、なんとも不思議な光景に思えます。
 今後、北朝鮮に手を差し伸べ続けることがいつまで出来るのか?経済要因と政治的要因の双方とも注目でしょうね。核ミサイルがあっても経済力がなければ、結局は三流以下なんですよね。

投稿: SAKAKI | 2007年8月23日 (木) 21時41分

SAKAKI様

コメントありがとうございます。私も、経済に詳しいわけではないので、多様な見解がありますね。

「太陽政策」に関しては、基本的にもう終わったとみています。基本的にこれは、ヨーロッパの戦後復興の理論なんですが、あまりにベクトルが異なります。つまり、相互協調という部分がないんですよ。これは、北朝鮮の核保有で明確になりましたね。ですから、もうこれは、韓国が取り込んでいくほかないと考えています。もちろん、韓国出身の研究者とお話させて頂いた時には、経済的差異は、もちろん、文化的差異についても言及されていて、連邦制のような形も、模索されているとのことでしたね。

ただ、いずれにしても、取り込み(段階的にせよ)になるとは思いますが。

朝鮮半島というのは、歴史的にみても、「中継貿易」を行ってきたんですね。この度のウォン高が、その付加価値を見込んでのものだとしたら、かなりの空洞化ですね。国際収支の悪化は、まさに、「中継貿易」のみで、国際競争力が落ちたせいだとは思いますが。

私の友人の韓国中小企業で働く女の子なんかは、会社、潰れそうだって言ってますけどね。まあ、一般化は出来ませんが。

中国だけでなく、韓国の政治・経済もしっかり分析しないとダメですね。やってるとは思いますが。

韓国経済が落ち込んだ時、日本はどう対処するかですね。

これも、次期韓国大統領、及び、韓国国民の民意が、重要な要因として作用しますが、このとき、朝鮮半島では、環境変化がありそうですね。

そしてそれは、言うまでもなく、日本にも作用します。

コメントありがとうございました。

投稿: forrestal | 2007年8月23日 (木) 22時54分

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