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2007年5月11日 (金)

ICCへの期待と課題

■日本のICC(国際刑事裁判所)への加盟が、今年中に決まりそうである。それを受けて、今国会では、国内法の整備のため、「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法案」が、審議、可決・承認された。

ICC(ICCのHP)とは、1998年から、交渉を進め、2002年に採択された、ローマ規程(以下ICC規程)に基づき、60カ国で、スタートした、国連とは、別の国際機関である。

詳細は、こちら(JNICC)とこちら(国際刑事裁判所と日本)のHP,ブログが役に立つであろう。

■今回は、法的な細かい議論は、極力避け、ICJとの比較、ICCの役割と、国際関係における意義について考える。

現在、ICC加盟国は、104カ国にのぼり、日本も、草案初期から、積極的に働きかけてきた。ICCとは、アド・ホックなICJ(国際司法裁判所)とは、異なり、常設である。また、国際法に従って、活動は行うが、国連とは、別の国際機関である。

■簡単に法的な構成にも触れておく。詳しくは、ICC規程を参照してもらいたい。

まず、国際法をベースにする国際裁判は、その強制力、すなわち管轄権の問題がある。

例えば、日韓の領土問題である竹島問題が、ICJで、ジャッジされないのは、韓国側が、ICJに管轄権を付託しないからであろう。簡単に言えば、ICJでは、両国間の合意がなければ、係争できないのである。

それに比べて、ICCの場合は、加盟国内において、加盟国(数カ国にわたっていても、一国の加盟国で良い、ただし、管轄権下に置かれるのは、加盟国のみ)からの要請、あるいは、安保理決議がある場合は、検察官の捜査、身柄引き渡し、裁判という訴訟手続きに入ることが出来る。ここで、確認しておきたいことは、ICJは、国家のみ対象にしたのに対して、ICCは、個人も対象にすることができる。

ICCの刑事罰は、集団殺害の罪、戦争犯罪に対する罪、人道に対する罪、侵略に対する罪と、明記されている。この点も大きい。ニュルンベルク及び、極東国際軍事裁判は、事後法で、罰則の明記もそれまではなかった。

では、ICC、検察官が、要請、承認を受ければ、当該国家で、自由に捜査活動が出来るのかと言われれば、そうではない。あくまでも、日本の協力法案にもある通り、国内機関の協力下に置かれる(ICCの捜査は、日本国の司法下に置かれる。)これは、加盟国、各国の国内法にもよるだろう。

■かなり大雑把に多少の誤解を承知の上で、説明したが、では、ICCは、国際関係において、どのような役割を果たせるだろうか。

正直のところ、実績が乏しいので、まだ、未知数としかいいようがないところもある。国連が、特設に設けた、旧ユーゴとルワンダの係争は、ほとんど、何もわからないままである。

また、今回のダルフールの内戦に関して、個人を特定し、身柄引き渡しを要求したが、スーダン政府は、これを拒否している。

最終的には、アナーキーな国際関係における強制力の限界に直面してしまう。

又、アメリカ、中国、インド、中東諸国の一部と主要国の不参加も大きい。アメリカに関しては、署名も破棄、2国間の免責条約も進めている。

しかしながら、国際機関の設置と国際規範の形成と発展が、アクターを動かす要因にもなりうる。つまり、全ての事柄が、ICCで、解決できるほど、国際関係は単純ではないし、各国・個人が常に法と正義を求めているとも言えない。(正確には、その法と正義は、各国・個人の利害や価値観で異なる)

例えば、アメリカは、現状、このICCを酷く嫌っているわけだが、アメリカが他地域における、安全保障上のコミットメントを訴追などを原因にやめたらどうなるだろうか。

国際環境構造は、劇的に変化し、ICCで、裁判どころではなくなる可能性が高い。

日本の加盟が遅れたのも、アメリカの動向を気にしてのことだろう。

それでも、現在、例え、偽善であっても、国際関係では、公正と尊厳が求められる。

ICCが作り出す法の秩序とパワーによって形成される秩序をバランスよく保ちながら、緊張する国際関係を安定させることが重要であろう。

■日本は、当然、多額の負担金を支払わなければいけない。それゆえ、国民への丁寧かつ的確なアカウンタビリティと、日米同盟のマネージメントに失敗しない程度に、有効にかつ、戦略的に使えるものは使えば良いと考える。

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