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2007年3月 9日 (金)

日朝関係の今後

■ニューヨークで行われた米朝協議についで、ハノイで行われていた日朝協議も終了した。

日朝、次回、日程決まらず、拉致問題で、平行線

2007年03月09日02時46分(朝日新聞)

 日朝国交正常化に向けた6者協議の作業部会は8日、2日間の日程を終えたが、次回の日程を決められず、北京の大使館ルートを通じて調整することになった。北朝鮮の反発による中断を挟んだ2日間を通じて日本は「拉致問題の解決が国交正常化の前提」と訴えたが、北朝鮮は「絶対に受け入れられない」と拒否し、「拉致は解決済み」との従来の姿勢を変えなかった。

 日本代表の原口幸市・日朝国交正常化交渉担当大使は協議終了後に記者会見し、「最低限、互いの立場を直接確認しあったこと自体には一定の意味があった」と述べたが、具体的な成果が得られなかったことは「遺憾だ」と語った。

 日本が拉致被害者・家族の早期帰還などを強く求めたのに対し、北朝鮮は、日本が発動した経済制裁の解除や、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)への弾圧中止、日本が横田めぐみさんのものとは別人と鑑定した遺骨の返還、脱北者支援のNGO団体関係者の引き渡しなどを求めた。

 北朝鮮代表の宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使は記者会見で「拉致問題は我々はすべてやった。今度は日本が動く時だ」と指摘。一方で、制裁が解除されれば「過程を見て(拉致問題の再調査を)考慮する」と含みをもたせた。

 国交正常化をめぐっては、日本が02年の日朝平壌宣言に基づき、請求権を相互に放棄した経済協力方式による一括解決を確認しようとしたが、北朝鮮は別途「過去の清算」を要求。会見でも宋代表は「強制連行など特大型の反人倫犯罪については、経済協力と別個に計算されなければならない」と主張した。引用おわり

■日朝の作業部会に先立って、ニューヨークでは、米朝の協議が行われた。以前から述べてきた通り、アメリカと日本では、対北朝鮮の脅威の認識レベル(国益レベル)に差がある。又、今年のジョージ・W・ブッシュ大統領の一般教書演説からも、伺える通り、北朝鮮問題に対する、プライオリティは、低い。北朝鮮問題に関するアメリカ外交の強攻策からの軟化に関する規定要因は、すでに以前のエントリに記した。(参照1参照2

アメリカからすれば、北朝鮮の核兵器・その生成物質、技術の拡散が防げればよいというのが、この問題におけるファースト・プライオリティである。また、一定の評価(6カ国協議での合意)を得て、中東(イラク、イラン)問題に集中したいというジョージ・W・ブッシュ政権の狙いがある。管理人は、場合によっては、米朝の国交正常化もあると考えている。

国際戦略環境上、イラク、イランの方が、アメリカにとって、国益に関わる。又、国内的にも、議会も国内世論も遥かに、こちらの方が関心が高い。又、ジョージ・W・ブッシュ大統領期に行われた戦争であり、大統領自身、後世に不名誉な大統領という汚点を残すことだけは、避けたいだろう。それゆえ、外交上の一定の成果が欲しいのである。米朝の国交正常化もありうるといった理由は、この要素が大きい。

又、イラク問題は、別の機会にエントリする。

■このようなアメリカの軟化を受けて、日朝協議だが、2日間で、3時間(恐らく通訳を除けば、その半分)、交渉にもならず、次回、日程も決めれなかった。

明らかに、北朝鮮を巡る関係各国の対応は変化している。特にアメリカをみれば顕著である。つまり、北朝鮮の置かれた環境は、変化したのである。北朝鮮の外交パターンをみれば、追い詰められば、小出し、小出しの中にも妥協の余地があるが、現在のように、特に米朝が宥和的で、余裕がでれば、対日本には、強硬的で、妥協の余地なく、外交目標を達成させようとする。

日本は、まず、アメリカの対応が変化したこと、北朝鮮の環境(境遇)が変化したことを認識しなければいけない。

日本単独の経済制裁もアメリカや中国の協力がなければ、その効果は半減するだろう。

「拉致問題解決なくして国交正常化なし」とは、安倍政権のスローガンであるが、このままの状況で、拉致問題は、解決するのだろうか。

拉致問題は、それこそ、被害者家族がご高齢のこともあって、「待てない案件」である。

北朝鮮の要求を全て呑む必要はないが、経済制裁やその他、支援をディールにして、日朝国交正常化をした方が、核・ミサイルをはじめ、拉致問題の解決にも有効ではないだろうか。

北朝鮮のような、情報も不透明、不確実性の高い相手に対して、開放性のインセティヴを与えていく方が賢明だと考える。

北朝鮮にアメリカや、日本の大使館が置かれれば、それだけ情報が現状より入るのでは、ないだろうか。

相手が交渉に応じないからという理由では、何の解決にも繋がらない。

では、どうやって、交渉に応じさせるか、その際、使える外交カードは何か、バーゲニング・チップは何にするのか、そういうことを思考すべきである。

現状、日本が単独で使えるカードは、そう多くない。経済制裁カードと国交正常化である。

経済制裁カードの強弱をコントロールしながら、目的でなく、手段として、日朝国交正常化を果たすのも、一つの有効な方法であろう。

もちろん、米中には、協力のため、働きかけを続ける必要がある。

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コメント

拉致問題ですが、日本側が何をもって「拉致問題解決」と見なすのかがはっきりしていない印象があるんですよね。
もちろん交渉事だから、日本側が最初からそれを明かす必要はないのでしょうが、少なくとも政府内部で達成目標をはっきりさせておかないと、拉致問題は永遠の問題となりかねないと思います。

投稿: Baatarism | 2007年3月 9日 (金) 10時32分

Baatarismさん

コメントありがとうございます。
仰る通りですね。「拉致問題解決」を謳うわりには、何をもって、解決とするのかが、釈然としませんね。

もちろん、交渉にかかる案件ですから、全ての外交目標が達成できるかはわかりませんが、これを目指す、あるいは、ここまでは、最低ラインであると総理は、丁寧かつ具体的に説明しなければいけません。

狭義に言えば、現在、拉致認定されている17名の方の調査・確認・帰国なんでしょうが。この拉致認定基準もよくわかりません。いわゆる特定失踪者と呼ばれる方は、100名近く挙がっていますから、これらも、政府は、調査、確認、帰国を求めるのでしょうか。

あとは、拉致工作員の逮捕、北朝鮮に対する、法的・政治的罰則などが考えられます。

もちろん、現段階で、その実現可能性は、少ないというのが、現実でしょう。

投稿: forrestal | 2007年3月 9日 (金) 22時28分

拉致問題は国交正常化しても解決しないでしょうね。だから現場は成果が無いことを見越して動いているように思えます。アメリカの宥和的な態度は・・対中国を睨んでいるような・・

投稿: SAKAKI | 2007年3月 9日 (金) 22時29分

 日本政府における「解決」の定義は、
 ① 被害者の帰国
 ② 真相の究明
 ③ 実行犯の身柄引き渡し
 です。客観的に③は無理だとと思います。日本では、この案件は、「犯罪」処罰と同じように考えられていることが問題だと思います。北朝鮮は、朝鮮戦争以来、戦時が継続している国家ですから…。

投稿: 雪斎 | 2007年3月10日 (土) 03時58分

■日本は「6カ国協議」を脱退し、徹底した経済制裁をするのを世論と拉致連も、国民も望んでると思うが、皆さんは何故、政府に強く要求していかないの?

長いタイトルで済みませんが、少し不思議なんですが、
「6カ国協議」は東アジアの平和を目的に特に核兵器の拡散と軍事利用の抑止のための具体的なプログラムを作成・実行するために立上がった協議国会議と思いますが、日本国と安倍首相の目的は
①日朝の対話と圧力②拉致問題の解決(これも国内問題の解決か国外問題の解決か解らないが)③もしかすれば、東アジアの平和
と続くと思われます。③などは、①、②の解決後ですから、目的からは外れ付け足しでしょう。
①、②はピョンヤン宣言のような最も日朝協議の議題そのものだし、北朝鮮が掲げる「不幸な過去の清算」もその最たるものでしょう。

さらに、安倍首相も拉致連も世論も国を挙げて、
①制裁こそが最も有効、②6カ国協議で妥協?(前に記載の①、②)しないと言って、前で書いた③は日本に関しては、重要度は後のほうということで
今後、1)6カ国協議の平和へのプロセスを遅らせるように働きかけざる得なくなるのが濃厚である
2)制裁などは出来なくなってゆく。
私にはこう見えて仕方がないので、今までの論調から、理論的に進めると後で国内的に苦しくなるより、早い時期での脱退と「制裁」強化を訴えていくことだと結論づけています。どうでしょうか。

投稿: kimjonnan | 2007年3月10日 (土) 16時52分

>SAKAKIさん

コメントありがとうございます。私は、以前から、北朝鮮問題においてのプライオリティは、「核・ミサイル・拉致問題」と述べてきました。

今回のエントリは、まあ、言葉は、悪いですが挑発的な意味を込めてあります。
国交正常化によって、「拉致問題」が解決するかは、わかりません。ただ、現状よりも、実現可能性があがる、不確実性が減る方法ではないかと思った次第です。アメリカに関しては、エントリにも書いたのですが、半ば、北朝鮮問題のほとんどを中国に丸投げのような形ですね。先送り、現状維持ですから。


>雪斎さん

コメントありがとうございます。
日本政府の定義は、そうなっているのですね。ご教授ありがとうございます。

そうですね。北朝鮮は、国際的に認知された「ならず者」国家ではあるけれども、国連に加盟している、主権国家であるという純然たる事実を忘れがちな人がいますね。又、休戦協定が結ばれているけれども、北朝鮮にとっては、戦時なわけです。この二つは、しっかり認識しておかなければいけませんね。

コメントいつもありがとうございます。


>kimjonnan様

民主国家である以上、国内世論を無視するわけにはいきません。要求している人はしているでしょう。
ただ、日本、単独の経済制裁のよって、どれだけのコスト・ベネフィットがあるのか、対話チャンネルを閉ざして、対北朝鮮により有効な方法があるのか懐疑的ですし、今でも、そう考えております。つまり、そのような威勢のよい、発言・行動は、国内消費用になれど、事態を進展させない可能性の方が高いわけです。
(むしろ悪化させているといってもいいかもしれません。)
私は以前から、北朝鮮問題の日本外交のプライオリティは、核・ミサイル・拉致問題の順だと述べてきました。(過去のエントリにもそう書いてありますよ。)

仰る通り、6カ国協議は、北朝鮮の核問題をメインに扱う協議です。ですので、拉致問題は、個別案件でした方が好ましいとも述べてきました。それを出来なくしてしまう、経済制裁には、基本的には、賛成しかねるわけです。つまり、相手のいることに対しての認知・認識の違いを想定しなければいけません。事態の着実な安定とコントロール、推移を観察しながらの柔軟な政策判断、これが出来なくなってしまっているように思います。

ただ、日本は、すでに経済制裁を行っていますから、その上で、どうすればいいのか、このカードの強弱を調整しながら、アメリカ、中国の協力を得ながら、国交正常化もカードにして、対応するべきだとエントリしました。
仰る懸念は、最もだと思います。「拉致問題」に固執することは、全ての解決を結果的に遅らせるかもしれません。ただ、アメリカにせよ、中国にせよ、他の関係諸国にせよ、この問題は、自国の国益上、現状、先送り、現状維持でいいわけです。ただ、日本の場合は、脅威認識レベルが異なりますし、アプローチにも差異が出てくるでしょう。(すでに出ておりますし)このことは、しかっり認識して、様々な想定をしておかないといけません。

ですから、アメリカ、中国、国際社会に向けて、はたきかける(もちろん、国内的には負担をしいられる可能性の方が高いわけですが)作業部会で、個別案件として対話のチャンネルを持つことができたのですから、これを有効に利用しないといけませんね。そのために、国交正常化もうまく使えと言っているのです。

では、日本が6カ国協議を出ることが望ましいか、これはでは、北朝鮮外交の狙い通りになってしまいます。あくまでも、その協議の枠内にいながら、核問題、個別案件を協議していく他は、今はないのでしょう。ただ、現状のままだと仰る通りの結果になる可能性もありますね。
勉強になるコメント、ありがとうございました。

投稿: forrestal | 2007年3月11日 (日) 00時44分

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