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2007年3月 1日 (木)

NATOの東方拡大論再考

■まず、2月は、更新頻度が落ちてしまった。その上、クオリティも落ちた気がする。読者の皆様には、申し訳ない。3月は、もう少しましになると思うのだが。。。

前のテンプレートは、あれはあれで気にいっていたが、雪斎さんHache様もテンプレートを一新され、又、3月に入ったこともあり、気分新たにと、管理人もテンプレートを替えてみた。正直、こういうセンスは、あまりない。ただ、読みやすく、前よりも少し明るめの印象のものを選んでみたつもりなんだが・・・。

カワセミ様のエントリ(ミサイル防衛とプーチン発言)を受けて、以前のブログでも、記事にしたことがあるのだが、11年前のアメリカで、行われたNATOの東方拡大論争を踏まえて、現状の分析にあたりたい。

■まず、ポスト冷戦のNATOの変遷を簡単にみたあとで、11年前のクリントン政権時にアメリカで、巻き起こったNATOの拡大論争を踏まえて、現状のNATOと拡大に対するアメリカの戦略とロシアの処遇を考えたい。

■冷戦期は、言うまでもなく、東側(共産圏)に対応するための、軍事同盟であった。しかし、冷戦終結、ワルシャワ条約機構解消後は、NATOは、ソ連に抑えられていた、新興独立国などにおける、政情不安や、民族的紛争に対応するための、ニューNATOとへと変貌する。つまり、領域外(NATO加盟諸国外)の地域安定に主眼が置かれる。このことは、1991年のNATOの新戦略概念にも謳われている。現在は、この’領域外’というタームは、副次的、例外的意味合いがあるということで、使われていない。(ちなみに現在では、NATO憲章5条:危機管理の対応がほぼ同じ意味である)。

地域安定を主たる目的としたNATOに対して、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどが、先陣をきって加盟を求める。ただ、ロシアとの関係などを考慮して、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領は、時期尚早であるとし、長期的には、加盟を認めるPFP(平和のためのパートナーシップ)をオルタナティヴとして作り、参加させる。1994年のことである。

しかし、政治的・経済的困難からロシアの親ヨーロッパにかげりがでてくると、エリツィン政権がNATOに対して好意的であった態度を一変させる。

このロシア政府の対応を受けて、1996年、クリントン元大統領は、デトロイトにおいて、NATOの東方拡大路線を発表する。

■このデトロイト演説を受けて、すでに賛否両論あった、NATOの東方拡大論争が、マスコミ・レベルまで、広がり、大論争になる。では、アメリカ国内で、どのような論争があったのか確認しておく。

●東方拡大賛成論

・ヘンリー・A・キッシンジャー

「ロシアの民主化と平和的な外交が表裏一体ではない、ロシアの自由主義と民主主義を支持する一方、ロシアの拡張を防止する策もとるべきである。」

・Z・ブレジンスキー

「NATOの東方拡大が遅れると、ロシアの地政学的野心が復活する」

●東方拡大反対論(ジョージ・F・ケナン、サン・ナム、ポール・ニッツェなど)

・特に示唆に富む反対論として、マイケル・マンデルボームの論を挙げておく。

「コンセンサス、包含性、透明性が必要である。NATOの東方拡大は、ロシアの反対で、コンセンサスが欠け、又、ロシアを包含していない。さらに、拡大の必要性、範囲、時期、コスト、拡大後の同盟態勢などが、不透明である。」

■その後、NATOとロシアとの間では、ロシアは敵でない旨の基本文書が作成される。

2002年に第43代アメリカ大統領に就任した、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、そのドクトリンとして、ロシアの反対を省みず、INF条約を破棄し、MD(ミサイル防衛)と資本投下をセットにNATOの東方拡大を推進する。MDとは、軍事的に言えば、相手のミサイル攻撃を無能力化させるシステム(兵器)である。

では、アメリカがNATOの東方拡大がMDと資本投下がセットでなされる戦略目標は何であろうか。冷戦後のNATOの目標は、上記に書いた。まずは、欧州地域の安定である。NATOに加盟することによって、特にアメリカがコミットする形で、加盟することは、自国の安全保障の安定化にアメリカが関わるということである。又、それによって、他の周辺諸国に加盟へのインセティヴを働かせる。そのサイクルによって、安定ー拡大ーアメリカの影響力を広げるというのが、このMDと資本投下による、東方拡大のアメリカの第1の戦略目標である。第2は、やはり、ロシアをコンテインメント(封じ込め)しようという戦略目標もあるだろう。少なくとも、ロシアは、そう受け取るはずである。第3に以前、エントリした、NATOのリガ・サミット共同声明にもあるように、いずれ、国際安全保障に参加させる。あるいは、すでに参加しているNATO加盟国をサポートさせる意図もあるだろう。

ロシアの反応は、いみじくも、ジョージ・F・ケナンが予想した通りである。

今後、NATOとロシアは、協議・調整に入るだろうが、ロシアを敵視する、少なくともそう認識されるような、露骨な政策は、取るべきではない。ロシアを常にアメリカとヨーロッパに開かれた状態にし、共同歩調を取るべきだろう。例えば、NATOと共同の軍事コミットをさせたりなどである。

ネオコンを嫌い、ジョージ・W・ブッシュ政権を批判した、ミアシャイマーは、そのアイディアだけ使われたようであるが、彼の自論だと、いずれ、アメリカ、中国、ロシアの3極構造になるらしい。これが当たるかどうかはわからないが、少なくとも、その潜在性がロシアにあることは、認識しておかなければいけない。

それにしても、ロシアに関しては、11年前の論争がそのまま、今でも当てはまるようである。本当に、ロシア情勢は、難しい。。。

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