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2007年1月15日 (月)

東アジアサミットと日中韓

■フィリピンのセブ島で、行われていた東アジアサミットが閉幕した。

議長声明に「拉致」明記 東アジアサミットが閉幕

東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国などアジア、オセアニアの16カ国が参加する第2回東アジアサミットが15日、中部セブで開かれ、北朝鮮に拉致問題解決への取り組みを求める議長声明を発表し、閉幕した。「日本の拉致問題で北朝鮮を刺激したくない」とする韓国や中国、北朝鮮の友好国が多いASEANの会議が、「拉致」を明記した声明を出すのは極めて珍しい。

 議長声明は北朝鮮問題について「朝鮮半島の平和的方法による非核化は国際社会の重要目標」とし、北朝鮮に対し核実験の中止と、核廃棄をうたった05年9月の6者協議共同声明履行に向けた前進を求めた。拉致問題を、食糧不足や不十分な医療態勢とともに「国際社会の安全と人道上の懸念」と位置づけ、北朝鮮に対し「積極的に取り組むことを促す」とした。・・・以下略

2007年01月15日20時56分 (朝日新聞)

■欧州訪問の後は、東アジアサミットと、大変、多忙極める安倍総理であるが、議長声明に「拉致」を盛り込み、又、日中韓の首脳会談では、中国側の拉致の協力をひきだし、4月には、温家宝首相が来日する予定である。韓国は、「拉致」に関しては、足並みが揃わないものの、北朝鮮の核問題においては、日中韓の協力関係が構築されつつある。積極的な外交姿勢である。

皮肉なことに、北東アジア情勢を巡って、国連や、アメリカ、ロシアも含めて、外交が活発化したことは、これまでに類がない。

■中国に関してだが、参議院選挙前に胡錦濤国家主席の訪日も実現するかもしれない。

2002年に、愛国団結政策を主導してきた、江沢民前国家主席から、胡錦濤国家主席に、権力交代し、台湾問題での米中衝突を回避し、2005年には、反国家分裂法により、台湾問題を中・長期的な問題化にするとともに、党内部の江沢民派を押さえ、現状、北朝鮮問題に本格的に取り組む余裕がある。

2008年には、北京オリンピック、10年には、上海万博を控え、北朝鮮問題をより深刻化しない、現状維持と体裁だけでも、北東アジアの平和と安定をアピールしなければいけない。このことが、中国のプライオリティの高い外交目標である。

それゆえ、管理人は、中国が、「拉致」問題で、具体的な成果のある行動をとるとは、考えていない。特に、6カ国協議を含めて、北朝鮮問題で強硬的になっている、日本を軟化させ、足並みを揃えさせる中国外交であろう。(アメリカも中国ステークホルダー論、及び北朝鮮との二国間対話へと軟化している。)

日本は、中国と国益が一致する部分においては、協調すればいい。つまり、中国も前小泉政権時ほど、対日本に対して、強硬にでることは出来ない国内事情を抱えているのである。中国に協力することで(貸しを作る)、対中国外交カードを持てばいいのである。

アメリカもイラク政策で、いきづまっている。また、国内的にも、2008年は、大統領選を迎える。日本は、北朝鮮問題において、米中のディール(取引き)の間に入り、調整を行ったりと、東アジア、国際社会に向けて、充分にプレゼンスを高めることが出来る。

また、米中、両国に柔軟に働きかけることが、日本の効果ある外交戦略である。

現状、アメリカ、中国の国内事情を見る限り、日本は、両国に外交カードを持つことが可能である。具体的に言えば、アメリカに対しては、イラク政策での協力、在日米軍再編の早急化など、中国に対しては、中国の抱える国際イヴェントへの最良の国際環境作りなどである。

これらは、短期的には、国益を損ねたなど、利用されているだけだという批判にあうだろう。もちろん、その可能性もなくはない。外交とは、そんなに、単純ではない。

しかしながら、日本が外交目標をもって、戦略のもと、政策を実行すれば、中・長期的には、日本の国益になる。相互作用の日本に返ってくる作用をより国益増大なものにしなければいけない。

■山崎拓氏の今回の訪朝だが、自民党内部からも、安倍政権からも、不信感を露にされている。この件については、雪斎さんの明晰な分析があるので、そちらを参照してもらいたい。山崎拓氏 訪朝の意味

管理人の見解も近いものがある。なんらかの成果が見込める可能性がなければ、これほどまでのリスクを冒して、行動はしない。成果というのは、短期的にあらわれるものもあれば、中・長期的なスパンがかかる場合もある。又、表面化しないかもしれない。

しかしながら、日朝における、不確実性を減らすべく行動をとったのだろう。

つまり、管理人は、以前にも述べたが、対北朝鮮に関して、日本の国益のプライオリティは、核、ミサイル、「拉致」問題の順である。もっといえば、6カ国協議では、核、ミサイル問題で他の関係国の足並みを揃え、取り組み、「拉致」問題は、2国間協議で、個別案件として、取り組む方が効果的であろう。バイの「チャンネル」は、常に確保しておくべきである。

核、ミサイル、「拉致」問題をマルチとバイで、行った方が、北朝鮮にとっては、厳しいものになるだろう。

もちろん、言うまでもなく一度に、全ての外交目標が達成されれば言うことはないが、その可能性は、極めて低い。

それゆえ、日本は、関係各国を戦略的に利用できるよう、外交の幅、オプション、カードを増やしておかなければいけない。

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コメント

「拉致」明記は、それが容認されないという「国際常識」を形成したという点では意味があります。
 ただし、「中国が具体的に何をしてくれるのか」ということになれば、甚だ心許ない。英国、フランスについても事情は同様でしょう。このことの意味を冷静に考える必要があるでしょう。

投稿: 雪斎 | 2007年1月15日 (月) 23時57分

>雪斎さん

コメントありがとうございます。

確かに、「拉致」に関しては、国際的な認知と、合意が形成されつつあります。このことは、大きな成果だと思っています。

ただ、記事にもエントリしたのですが、では他国が具体的に何かしてくれるのかというと、悲観的にならざるえません。

それゆえ、バイの「対話チャンネル」は、保持すべきだと書きました。

このことは、もう少し、冷静かつ客観的に考えなければいけませんね。

投稿: forrestal | 2007年1月16日 (火) 07時56分

>対北朝鮮に関して、日本の国益のプライオリティは、核、ミサイル、「拉致」問題の順である。

まったくそのとおりだと思います。しかしこれを言うと、「拉致は棚上げか!」という批判を浴びるので、どなたもあまり公然とは言えないんですよね。
そうではなくて、核、ミサイルの問題を解決した後、拉致問題に本格的に取り掛かるということで、時間的な優先順位は3番目ですが、決して棚上げではない。
核、ミサイルは拉致問題解決への外堀を埋めることだと説得したら、彼らもわかってくれるでしょうか。

投稿: talleyrand | 2007年1月18日 (木) 16時01分

>talleyrand さま

コメントありがとうございます。

公然と言う人は、殆どいませんね。

ただ、「プライオリティが他より低い=重要ではない」では、ありません。

たしかに、プライオリティは、この順ですが、それが時間軸を

表しているわけではありません。

核も拉致も同時並行に取り組むものです。

ただ、結果、時間的差異が生まれるかもしれません。

同じテーブルで、同じプライオリティで、取り組むことではない

と考えています。

投稿: forrestal | 2007年1月18日 (木) 21時14分

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