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2006年12月 1日 (金)

日本の新外交方針

防衛庁が省に昇格される法案が衆議院を通過する中、麻生外相が新外交方針を打ち出した。 こちらが、麻生外相のスピーチ『自由と繁栄の弧をつくる』

麻生外相、新外交方針『自由と繁栄の弧』を打ち出す

麻生外相は30日、都内のホテルで開かれた日本国際問題研究所の講演会で、東南アジア、中央アジア、東欧での民主的制度の定着や経済発展を重点的に支援する新たな外交政策「自由と繁栄の弧」を打ち出した。この地域への支援を積極的に進めることで、日本の地球規模の貢献を明確にすると同時に、天然資源確保など、現実の「国益」につなげることを目指す。「日米基軸」「近隣外交」とともに、安倍政権の外交戦略の柱に位置づける方針だ。

 外相は講演で、「『日米同盟強化』『中国、韓国、ロシアなど近隣諸国との関係強化』という日本外交の基本に、もう一本、新基軸を加える」と述べた。そのうえで、<1>民主主義、自由、人権、法の支配、市場経済という「普遍的価値」を重視する「価値の外交」を展開する<2>その一環として、ユーラシア大陸の外周に成長している新興の民主主義国を帯状につなぐ「自由と繁栄の弧」を日本が積極的に関与して作る――とする意向を表明した。

 同地域への支援は、具体的には、「カンボジア、ラオス、ベトナムへの支援継続」「中央アジアの自立的発展の支援とアフガニスタンの安定」「グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバの安定」などが課題となる。今後、各国との対話の枠組みを確立する一方、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)との協力も進める方針だ。同地域で活動する企業や民間活動団体(NGO)との連携にも力を入れることにしている。(読売新聞)

■日本が多角的外交を進めることは、好ましいことである。それだけ、外交の幅が広がる。

しかしながら以前にも書いたが、それだけのリスクとコストを負うことになる。

管理人が用いる’戦略’とは、国益確保・減少を最小限に・増大のために、一定の方向性を示し、それに伴う想定(様々な想定)を内的シュミレートし、そこから生じるリスク・コストのヘッジ・マネージメントのアイデアなり政策なりがあるものを言う。

この麻生外相の講演では、方針(ビジョン)なので、そこまでの戦略性はない。もちろんこれから戦略策定に着手するのだろうが。

実際、中身を見てみると、それほど、新しいことはない。つまり、もうすでに、行っているものに、名前をつけた程度ある。まだ、これまで以上の新しさが具体的にはわからない。

目新しさと言えば、’価値外交’と’自由と繁栄の弧’という言葉ぐらいだろうか。現状では、おそらく、アメリカの補完的役割を担う点と、従来からの経済力とソフトパワーを使うことであろう。

■国際政治において価値というのは、パワーや国益を為す重要な要素である。

アメリカを例にとれば、アメリカが掲げる理念や価値は、国内の多種多様性をまとめると同時に、それは内外の区別をなくす。理念や価値が多分に先行しがちであるが。そこに、国益(物理的な要素)が絡むのである。

又、時として、その理念や価値を後押しする形で、軍事力や経済力を用いることもある。イラク戦争などよい例であろう。

ここで、考えたいのは、アメリカの場合、アメリカの理念や価値が、内を束ねると同時に外に向かうのである。ウィルソンの理想主義的、歴史的潮流がある。

また、あれほどの軍事力・経済力・ソフトパワー(魅力的に惹きつける力)があるからこそ、できる価値外交とも言える。

それでも、みなさん、ご存知の通り、アメリカが世界中から多くの反発と価値の押し付けと批判されていることはご存知だろう。

価値というのは、それだけ、扱いが難しいものなのである。つまり、世界は、一元的な価値で、構成されているわけではない。

この辺りは、慎重に行わないと返って大きな摩擦を生み、日本の国益を減少させる可能性もある。特にそれが、他国の国家体制や経済基盤といった、より重要な部分に該当する場合には。

■麻生外相の発言は、ワード・ポリティクスとして、パワーの裏づけがあり、日本の方向性を内外に強く示したり、リーダーシップを発揮している点では、非常に評価できる。

しかし、実際、それを現実に戦略・政策形成しようとすると、少し、手を伸ばし過ぎではないだろうか。戦略目標として掲げることは、非常に重要である、しかし、現実がついていかないのではないだろうか。つまり、アメリカとの関係、近隣諸国との関係、それに加えて、あらたな方針は、特に扱いの難しい’価値’を掲げて、現実、どこまで何ができるのだろうか。それに加え、法的な問題も出てくるかも知れない。(集団的自衛権や自衛隊の派遣など) もちろん、どの主体が、どの程度まで、何を行うか次第ではあるが・・・。

管理人が危惧しているのは、おそらく現段階では、早計なのだろうが、

①価値というものの扱いの難しさ

②外交の幅が増えることは良いことだが、柔軟性が伴うのか。つまり、国力以上の外交力以上のことをして、返って、国益を損なわないか。(リスク・コストの問題)

③法的な問題が生じた場合、それをクリアできるか。

以上、危惧ばかりを述べてきた感があるが、日本のソフトパワー(魅力的に相手をひきつける力)は、文化・情報力は、決して低くない。それを糸口に、価値を共有しようとする国家に対して、支援・協力することは、アメリカに対してのみならず、日本自身の国益にも繋がるだろう。

麻生外相の講演は意志表示のレベルでは、素直に評価したい。

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 外務省HPにある麻生外務大臣演説「『自由と繁栄の弧』をつくる」(平成18年11月30日 於:ホテルオークラ(下では「麻生演説」と表記)を拝読しながら、「わたくしのアジア戦略 日本はアジアの実践的先駆者、Thought Leaderたるべし」(平成17年12月7日 於:日本記者クラ..... [続きを読む]

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