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2006年12月 7日 (木)

イラク研究グループの報告

12月に入り、めっきり寒くなりました。それに加え、忙しくバタバタしたりで、更新も滞ってしまいすいません。今回は、12月6日にだされた、イラク研究グループの報告書を簡潔に紹介して、少しコメントします。

中岡望氏のブログにサマリーの全訳が掲載されているので、そちらから抜粋して、報告書の内容を考えたい。中岡望氏のイラク研究グループの要約の全訳

■今回の報告書では、主にポイントは、2点、少し長いが、抜き出しておく。

①外部からのアプローチ

イラクの隣国の政治と行動は、イラクの安定と繁栄に大きな影響を及ぼす。同地域のどの国も、混乱に陥ったイラクから何の恩恵も得ることはできないだろう。しかし、イラクの隣国はイラクが安定を確保するために十分な支援をしていない。幾つかの国は安定を阻害している。

アメリカは、イラクと同地域に安定をもたらすために国際的なコンセンサスを構築するために新たな外交行動をただちに始めるべきである。アメリカは、イラクの混乱を回避することに関心を抱く、イラクの隣国を含むすべての国を外交努力の対象にすべきである。イラクの隣国と同地域内および同地域外の主要国は、イラク自身が達成することができない安全保障と国内融和を促進するために支援グループを設置すべきである。

イランとシリアがイラク国内の情勢に影響を与える能力を持ち、彼らの国益はイラクの混乱を回避することであることを前提に、アメリカは両国に建設的な関与をさせるように努力すべきである。両国の行動に影響を与えるようとするなら、アメリカは利用できるディスインセンテフィブ(disincentives:意欲を削ぐ政策)とインセンティブ(incentives:意欲を高める政策)の両方を活用すべきである。イランは、武器のイラクへの流入を阻止し、イラクの主権と領土保全を尊重し、イラク国内の融和を促進するためにイラクのシイア・グループに影響力を行使すべきである。イランの核計画問題は、引き続き国連安保理事会の常任理事国5カ国プラスドイツによって処理されるべきである。シリアは、イラクとの国境を管理し、イラン内外からの資金の流入と反抗分子とテロリストのイラン国内への流入を阻止すべきである。

アメリカは、アラブとイスラエルの対立と地域的な安定を直接処理できなければ、中東での目標を達成することはできない。そのためには、アメリカはアラブ・イスラエルの総合的な和平を達成するために「コミットメント(約束)」を更新すべきである。2002年6月にレバノン、シリア、ブッシュ大統領がイスラエルとパレスチナの2カ国を認める解決策(a tow-state solution for Israel and Palestine)を支持するコミットメントを行なっている。このコミットメントの中に、イスラエルとレバノン、(イスラエルの存在権を認める)パレスチナ人、シリアの直接交渉を含めるべきである。

アメリカがイラクと中東に対する新しい政策を立案し、アメリカはアフガニスタンに追加的な政治的、経済的、軍事的支援を与えるべきである。その中にイラクから戦闘要員の撤退が完了したら与えるという条件をつけた支援を含めるべきである。

②内部からのアプローチ

イラクの将来にとって最も重要な問題は、イラク人の責任である。アメリカは、イラク国内でのアメリカの役割をイラク人が自らの運命に対して責任を取るように勧めるように調整すべきである。

イラク政府は、イラク部隊の数と質を高めることでイラクの安全保障に対する責任を負うべきである。このプロセスは進行中であるが、それを促進するためにアメリカは大幅にアメリカ軍の要員を増やすべきである。その中にはイラク軍を支援する戦闘部隊が含まれる。責任の移行が進むにつれて、戦闘部隊はイラクから撤退することが可能になる。

イラクのアメリカ軍の主要な使命はイラク軍の支援に変わっていくべきである。したがって、イラク軍は戦闘作戦に対する主な責任を負うことになる。2008年の第一四半期までに、地上での安全保障状況の予想外の展開がなければ、force protectionに必要でない全ての戦闘部隊はイラクから撤退することになる。その時点で、イラクに配属されるアメリカの戦闘部隊は、イラク軍に組み込まれている部隊(units embedded with Iraqi forces)と迅速対応・特別作戦チーム(rapid-reaction and special operation teams)、訓練、装備、アドバイス、force protection、調査・救援に関わる部隊だけになる。諜報活動と支援活動は、継続される。迅速対応・特別作戦チームの主要な任務は、イラクのアルカイダの攻撃に携わることである。

イラク政府が当分の間、アメリカから支援を必要とすることは明らかである。特に安全保障の責任を果たすためには支援が必要である。しかし、アメリカは、もしイラク政府が任された責任を果たさないならアメリカは予定された配属を含め予定通りに計画を実施することをイラク政府に対して明確にしておくべきである。アメリカは、イラクに多数の軍人を配置するという無制限の約束をすべきではない。

アメリカ軍の再配置が進むに従って、軍の指導者はアメリカに帰国した兵士が完全な戦闘能力を回復するための訓練と教育に注力すべきである。装備がアメリカに戻されたら、議会はそれから5年間の間、装備の機能を維持するために十分な予算措置を講じるべきである。

アメリカは、国内融和、安全保障、統治といった特別な目的の達成を支援するためにイラクの指導者と密接に協力すべきである。奇跡は期待できない。しかし、イラクの人々は行動と前進を期待する権利を持っている。イラク政府は、イラク市民に(としてアメリカ国民に)イラクが継続的な支援をするに値する国であることを示さなければならない。

アルマリキ首相は、アメリカと協議しながら、イラクにとって重要な目標(milestone)を実施に移してきた。首相の掲げたリストは好調なスタートを切った。しかし、政府を強化し、イラクの人々に恩恵をもたらすような目標を含めるようにリストを拡大すべきである。ブッシュ大統領と国家安全保障チームは、明確なメッセージをイラクに伝えるためにイラクの指導者と密接かつ頻繁な接触を維持すべきである。こうした目標を達成に向かって大きく前進するためにイラク政府は迅速な行動を取らなければならない。

イラク政府が政治的意思を示し、国民融和、安全保障、統治の確立という目標を達成するために大きな前進を遂げるなら、アメリカはイラクの治安部隊の訓練と支援を継続し、政治的、軍事的、経済的な支援を継続する意志があることを明らかにすべきである。イラク政府が目標に向かって大きな前進を示すことができないなら、アメリカはイラク政府に対する政治的、軍事的あるいは経済的な支援を削減すべきである。

私たちのレポートは、他の幾つかの領域に関する勧告も行なっている。それには、イラクの裁判制度の改善、石油部門の改善、アメリカのイラク再建計画、アメリカの予算プロセス、アメリカ政府役人の訓練、アメリカの諜報能力の分野が含まれる。

以上、①外部からのアプローチ、②内部からのアプローチが主要なポイントだろう。

■①に関しては、イラク周辺の中東湾岸諸国を協力させるという趣旨だが、確かに、その近接性ゆえ、相互影響力が大きい(与える・受ける)にも関わらず、イラク周辺の中東諸国は、イラクに関して目だった動きはしていない。しかし、それは、逆を取れば、イラクにコミットメント(関与)しないほうが、自国の国益に繋がる、少なくとも、事態をこれ以上、悪化(中東全域に広げない)させない策であったとも言える。

イスラエル、シリア、レバノン、パレスチナ、(クルド)、イランと容易に交渉で、好転できる相手ばかりではない。これらの国家や民族、宗派にイラクの現状が飛び火しないように、周辺諸国に対しては、最小限の協力を手伝ってもらうよう、お願いするぐらいだろう。

管理人は、以前のエントリでも書いたが、外部からというなら、国際社会や、国連に協力をもっと仰ぐべきである。周辺諸国に関しては、最小限の協力に留めるべきだろう。もちろん、イラクの武装集団に資金や武器を提供しているラインはきらなければいけないが、高圧的な対応は、禁物である。イラク問題を中東全体の問題にするのは、リスクもコストも高い。必要性に応じて、周辺諸国にコミットするアプローチの方が賢明である。

■②については、イラク軍を強化・養成して、アメリカ軍は、段階的に撤退していく。そのための支援と協力は行うが、重要なのは、イラク政府の取り組みである。という趣旨だが、当たり前といえば、当たり前である。しかし、それがこれまでできなかった原因をもっと分析すべきである。現状のイラクは、国連事務総長アナン氏や、アメリカメディアでは内戦と呼ばれている。ちなみに、国際法上の内戦・内乱の定義はないゆえ、歴史的にみて

①1国家内において、政府と反政府勢力が戦闘状態にある場合。

②政府が機能せず、いくつも勢力が乱立し、勢力争いを行って戦闘している状態

おそらく、この①に近い状態だとは思うが、このような状態で、養成・強化が現実に可能だろうか。この外部アプローチと内部アプローチは言うまでもなく相互補完的なものであるが、今一度、はじめにあった構想をおもいだしてもらいたい。フランスは、文化遺産保護、ドイツは、治安・警察部隊の育成、日本は、経済的支援という、構想もあったのである。

このドイツの場合は、一度、自国(ドイツ)で訓練したのち、イラクで働いてもらうという構想であった。

■最後に、アメリカは、もう少しグローバルな視点からのアプローチ(外部アプローチ)と、より現実性のある実行可能な詳細なイラクに対するアプローチ(内部アプローチ)を考えないとまたしても、失政に終わる。つまり、国際社会の協力を仰ぎ、又、(自国の)中東・イスラム研究者の意見をもっと傾聴すべきである。アメリカの国益につながる国際戦略環境作りにはほど遠い。

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