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2006年12月12日 (火)

中国の政治体制の動向

国際化から国際社会の主要なアクターになりつつある中国。6カ国協議でも、仲介外交として、国際社会、アメリカ、北朝鮮を対象にしながら、現状、成功しているのではないだろうか。

政治は、共産主義体制、経済は自由市場経済と一国2システムの中国であるが、現状、共産主義から民主主義へのプロセスは停滞している。(ミンシン・ペイの見立て)

今回は主に中国の政治体制について、欧米研究者の見解を紹介しながら、考えたい。

■改革・開放路線を導入した鄧小平氏が1997年に死去して以降、欧米の中国研究者は、その後の中国政治の行方をめぐって大まかに3つのシナリオのいずれかの立場がとってきた。

①現体制の崩壊 (ゴードン・チャンなど)

②民主化(ブルース・ジリー、ミンシン・ペイなど)

③共産主義(権威主義)体制の存続(アンドリュー・J・ネイサンなど)

以上、代表的な研究者をあげてみたが、その見解を順をおって確認しよう。

■①日本版の訳書では、『やがて中国の崩壊がはじまる』で、有名なゴードン・チャンであるが、彼の崩壊シナリオは、次のようなものである。

政府が人民にアカウタビリティを果たさないことに加え、行政制度の不備、腐敗、汚職と政治的抑圧である。特に興味深い分析は、政府へ反発を募らせる宗教団体(法輪功など)、少数民族の存在、財政赤字、WTO加盟による、雇用喪失の増加、この結果、社会的な道徳が衰退し、反政府派が結びつき革命を起こし、CCP(中国共産党)を崩壊させるというシナリオである。

■②ブルース・ジリーは、中国の民主化は必然であるとまで強調している。彼が着目するのは、中国は、1世紀もの間、民主的価値を育んでおり、それに加え、大規模な中産階級が新たに誕生している点である。現在の体制が社会的ニーズを満たせないにも関わらず、反政府派は、体制崩壊させるほど充分ではないことは認めつつも、その上で、共産党指導層内の民主勢力と社会的な民主勢力が団結して、将来、権力抗争を乗り切り、民主化へと導くというシナリオである。

■③アンドリュー・J・ネイサンなどは、経済成長を維持しつつ、一方でたくみな抑圧策、プロパガンダ路線を展開し、強硬な対外路線(主に対日本など)で、国内ナショナリストを満足させ、CCPは、今後も人民の支持をつなぎとめていくというシナリオである。また、2002年~2003年にかけて、党指導層の交代を成功させ、有能なテクノクラートが、農村部の貧困や不良債権問題に取り組んでいると主張する。

■今後の動向は

以上、非常に簡潔に見てきたわけであるが、①~③後のシナリオについて、予測しているものは、殆どない。はじめに書いたミンシン・ペイの見立てであるが、その打開として、彼は、3つのシナリオを考えている。1.民主化 2、体制の崩壊 3.連邦化 である。しかしながら、そのプロセスは、不透明である。

ミンシン・ペイのみならず、上記に挙げた3つのシナリオもあくまでもシナリオであるから仕方ないのかも知れないが、不透明かつ、プロセスが曖昧で、生じるリスクやコストについての言及はない。極めて不確実性が高いといわざるえない。

管理人も簡単に中国の将来を予測することはできない。しかし、経済的に発展している。国内世論的なものが形成されつつある。(ネットなどを通じてであるが、反日デモなどは、皮肉なことに、民主的である。)沿岸部の富裕層が生じている。(政治的自由の追求)

このような事実を前提にすると、決して、民主化してないとは一概には言えない。しかし、現状、いろいろと問題はあるだろうが、共産党独裁であるがゆえに、中国が主要な国家として機能している側面もある。段階的かつ平穏な民主主義への移行には、時間がかかると考えている。

そして、国際政治の構造上、外的環境の変化が、内的にリンケージさせ、国内の政治構造の劇的な変化も想定しなければいけない。例えば、アメリカ経済の失速に伴う、経済成長のストップや、台湾をめぐる問題が軍事化した場合、朝鮮半島で有事が起こる場合などである。

ワシントンもどのような中国が好ましいのか、意思統一がとれているわけではない。

日本は、あらゆるシナリオのもと様々な想定を立て、内的にシュミレートし、国益を減らすことなく、増やせるように、リスク・コストのヘッジ・マネージメント政策は立てておかなければいけない。

(論座2006年12月号 アンドリュー・J・ネイサン論文に依拠するところが多い)

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「国際情勢」カテゴリの記事

コメント

中国がどのような道を歩むにせよ、大きな変化は2010年代になるんじゃないかと思っています。
こう思う理由については経済面の理由が大きいのですが、今の中国の高成長は設備投資が牽引しているため、いずれは供給過剰となり、今のような高度成長は長くは続かないでしょう。そのようにして高度成長が終わる時期が、北京オリンピック&上海万博後の2010年代初めじゃないかなあと予想しています。そうなると失業者や貧困層が増えて社会が不安定化しますから、そのときにどうなるかでしょうね。

そのときの中国の状況ですが、日々是チナヲチさん(http://blog.goo.ne.jp/gokenin168/)が予想しているような、末端から中国共産党の組織が立ち腐れていき、統治能力が弱っていくという状況が一番あるように思います。中国共産党は主要都市と交通路という「点」と「線」の支配はある程度民意を受け入れながら維持するけど、農村部や辺境での「面」の支配はできなくなっていくのではないでしょうか?

投稿: Baatarism | 2006年12月13日 (水) 10時16分

Baatarismさま

コメントありがとうございます。今後もよろしくお願いします。

私も2010年代がひとつの大きなターニング・ポイントの時期だと考えています。もちろん、記事にも書いた、国際環境の劇的な変化がなければですが。。。

経済的なことは、あまりわからないのですが、面から点と線に現在、集中している(都市に出稼ぎに出てる)、つまり農村部や辺境での支配もかなり、腐敗しているというのが現状ではないでしょうか。

中国のマーケットとしての潜在性は、高く評価されていますが、如何せん、資本蓄積がなされないため、国際競争力を持つ自国多国籍企業が生まれない。さらに、不確実性が極めて高いので、欧米企業は、つかず、離れずで、様子を見ている感じでしょうか。

政治的なことを言えば、農村部や、辺境の貧困層がすでにもう、点になって、共産党の支配が及ばないところまできつつあります。ただ、これはまだ、現状、点ですので、大きな力にはなりませんし、波及もしてません。この点を線にするネットワークの構築、富裕層や共産党指導層の現反政府勢力が団結したとき、統治能力が一気に弱まるんでしょうね。つまり、下からも、上からも、そして、中間層を取り込んでいくという構図です。このきっかけが、
日々是チナヲチさんの言う下からかもしれません。
歴史的に見ると、地方の小さな出来事に、エリート層が絡んで、富裕層ー中間層を取り込んでいくとうのが、革命などにはよく見られます。

ただ、やはり、経済がキーポイントですね。
私の読む文献は、政治系なので、その辺の知識・見識のなさは自覚しております。
また、末端に関しても、なかなかジャーナリストの報告が上がってこないですね。それの信憑性も検証できませんし。

今後もお知恵をお貸しください。
アメリカ外交・安全保障政策を専門にしてた自分には、きついところがあります・・・w

投稿: forrestal | 2006年12月13日 (水) 14時13分

追加情報。
中国経済関係ならこの方のブログもお勧めです。
中国のみならず、グローバル経済関係でもお勧めかな。

梶ピエールの備忘録。
http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/

投稿: Baatarism | 2006年12月13日 (水) 15時46分

Baatarism さま

再度のコメント、ありがとうございます。

情報提供、感謝です。

『梶ピエールの備忘録』ブログ、早速、お気に入りに

入れさせてもらいました。

情報は、収集・分析、共有してこそ、パワーになる。

本当にありがとうございます。

投稿: forrestal | 2006年12月13日 (水) 20時23分

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