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2006年11月21日 (火)

集団的自衛権をめぐる議論

ミサイル防衛の配備をめぐって、集団的自衛権の個別案件についての検討がなされる見込みである。今回は、大まかな集団的自衛権をめぐる国際法理と日本外交についてコメントしたい。

MDの集団的自衛権、『福田談話』見直しも・・・官房長官

 塩崎官房長官は20日の記者会見で、ミサイル防衛(MD)の集団的自衛権行使の事例研究に関連し、MDを日本の防衛目的に限定した2003年12月の福田官房長官談話の見直しもあり得るとの考えを示した。米国へ発射されたミサイルを日本が迎撃する問題の事例研究について、塩崎長官は「(福田長官の)談話の真意も議論しようということだ。結果によって談話を見直すかどうかが決まる」と語った。        以下、略・・・(読売新聞)  

■まず、国際法の観点から、個別的自衛権、集団的自衛権は主権国家、固有の権利であり、慣習法である。さらに、国連憲章2章4項(武力行使の禁止)の例外として、憲章51条にも明記されている。

国際法上の集団的自衛権の主な学説としては

A 『個別的自衛権の共同行使である』(バウエット)

B 『他国が攻撃された場合にそれを助ける権利である』(ケルゼン)

C 『自国と密接な関係にある国家が攻撃された場合には、それは、自国の独立と安全という法益の侵害にもあたる。それに対して行使する権利である』(ラウターパハト)

現在では、このC説が主流である。

また、その要件として、〈切迫性・必要性〉と〈均衡性・比例性〉がある。

しかしながら、ICJのニカラグア事件の判決では、この2要件に加え、〈重大な武力攻撃を受けたという宣言〉と〈要請〉が判決上ではあるが加えられた。

当時の冷戦状況下の米ソの軍事介入が、上記2要件の付け加えの大きな要因ではあるが、あまり、法的解決になじまないケースで、厳格な規定してしまうことは、権利の権利性を損なってしまう。また、国際環境の変化に対応しにくくなるだろう。

以上が、非常に簡潔ではあるが、大まかな国際法上の集団的自衛権である。

■日本でよく言われる『武力行使一体化論』であるが、そのような考えは、国際法にはない。あくまでも、主たる行為の支援行為として、国際法の国家責任分野での違法性が問題になるのである。つまり、支援行為は、支援行為(国家責任)の基準に従って、合法・違法などが決まるのである。

■管理人の見解としては、集団的自衛権を国際法レベルで認め、行使できるようにするべきであるということである。単に、アメリカのみならず、場合によっては、ロシア、中国、韓国、東アジア諸国、オーストラリア、ニュージーランドなどとも、協力できるのである。

(ちなみにNATOの国際法上の根拠も、この集団的自衛権である)

それだけ、日本の外交オプションが増えるのである。

集団的自衛権を認めれば、アメリカと地球の果てまで、戦争をしにいくのではないかという批判(?)をよく耳にするが、それはあり得ない。集団的自衛権は、先にも紹介してあるとおり、自衛権なのである。それゆえ、要件が必要である。

又、日本の国益にそった政策判断も入る。

今後の国際環境の中で、日本が一国平和主義で、生き残れる(現在の繁栄と平和を維持できる)という認識は管理人にはない。

最後に、オプションが増えることは、それだけのリスクとコストを負う可能性もあることも留意しておかなければいけない。

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コメント

>集団的自衛権を認めれば、アメリカと地球の果てま
>で、戦争をしにいくのではないかという批判(?を
>よく耳にするが、それはあり得ない。集団的自権
>は、先にも紹介してあるとおり、自衛権なのであ
>る。それゆえ、要件が必要である。

>又、日本の国益にそった政策判断も入る。

 問題はそこから先です。「要件」をどれだけ安全保障基本法の中に厳密に(政治に影響された拡大解釈の余地を残さずに)最悪の事態も想定して書き込めるか、これこそ一番の難題です。「日本の国益にそった政策判断」と、言いますがこの表現は政治判断によっていくらでも強弁可能な所が怖いです。

投稿: bystander | 2006年11月22日 (水) 17時52分

(続き)
 ある程度、地理的範囲を絞り込めるよう安保基本法に書き込まないと「アメリカと地球の果てまで、戦争をしにいくのではないか!!!!かんしゃくおこる。!!!!」を火病ること100%確実な夜盗との国会論戦を乗り切るどころか
 その前段階のハードルたる、安保絡みでは「石橋を叩いて渡る所を想像し、実際に叩いてはみるが渡ることはしない」かのごとく慎重姿勢を取る大作党との与党内政策調整すらままらないと思いますが。

投稿: bystander | 2006年11月22日 (水) 18時15分

bystander様

はじめまして、コメントありがとうございます。

国内法に関しては、まったく触れずでしたが、もちろん、フリーハンドは、危険です。政治というのは、法の中の運用ですから、どの程度、しばりをかけていくか、これは解釈が割れるでしょうね。
ただ、御説の通り、
>「要件」をどれだけ安全保障基本法の中に厳密に(政治に影響された拡大解釈の余地を残さずに)最悪の事態も想定して書き込めるか、これこそ一番の難題です。
このことの難題さには、同意です。

管理人の見解は、現状のような恒久的な有事立法もなく、
拡大解釈的な特別措置法、時限立法での場当たり的な対応は、好ましくないと考えています。

又、国会論戦、与党内調整がままらないのも、おっしゃる通りだと思います。これは、政治がリーダーシップを取って、きちんと、何故、なんのために必要か、どのようなオペレーションになるのかなど、国民にアカウンタビリティし、選挙で、民意を判断するしかありません。
実際の運用レベル以前に、意思表示(国民に提示)のレベル、法的・制度的な枠組みを整えるレベル、これらを、段階的にクリアしなければいけません。

あまり楽観的で(政治に期待しすぎで)、コメントのお答えにはなっていませんが、管理人は、立憲国家として、憲法を解釈改憲的(拡大解釈的)にやり過ごすのは、(法には解釈がつきもですが)、法治国家の理念に反すると考えています。

投稿: forrestal | 2006年11月22日 (水) 19時26分

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