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2006年11月14日 (火)

日本の核武装論に関する所感

時代を最後尾から追いかけるということで、もう、旬を過ぎた感じもするが、日本の核武装論議に対する所感を述べたい。

このたびの中川政調会長、麻生外相の核議論発言には、およそ、このような意図があったのではないかと考えられる。

①国内への政治的・心理的効果(負荷テスト)
②諸外国、主にアメリカの反応の確認
③軍事・軍備(それに関する法規など)の再考
④諸外国、主に中・露に対する牽制

この①~④について言及すると、この中では、①と③は、リンクする。
つまり、核アレルギーがどの程度のものか確認すると同時に、最も衝撃の強い問題で、ある程度、国民感覚を麻痺させ(慣れさせ)、その他の非核3原則の見直し、集団的自衛権、米軍の空母、原潜の配備、憲法改正(主に9条の積極的改憲)まで、世論をスムーズに導くための、布石の効果を見て取ることができる。又、右翼層のガス抜きとしての効果もあったのではないかと考える。

②に関しては、アメリカでは、賛否両論あるものの、日本の防衛義務を確約させた点までは、計算通りだとしても、欧米の反響は、懸念や危険視が主流的で、これが計算以上に大きく、広がった側面がある。
つまり、日本の核武装そのものではなく、その波及効果である。(後、言及します)

④に関しては、まったくもって的はずれである。現状・残念ながら、日本の核武装の意思表示は、牽制的な要素は、あるものの、牽制とまで、強いものにはなっていない。同時にアメリカにまで、牽制的な効果をもってしまうことは、米軍のプレゼンスが減る可能性もあるわけだからから、かなり、リスキーな策略である。

(ただ、日本における核武装議論は、目新しいものではない。1968年 NPT条約成立を受けて、佐藤内閣は、秘密研究会で議論し、アメリカの核の傘に入りつつ、非核3原則を打ち出している。)

むしろ、欧米諸国からの懸念は、日本の核武装の波及効果である。つまり、日本の核武装が、NPT体制を完全に形骸化し、東アジアに核保有のドミノをおこし、核軍拡レースに陥り(セキュリティ・ジレンマ)、東アジアの更なる不安定化を招く。また、ルーズ・ニューク(厳格な管理体制にない核兵器)がテロリストに渡る可能性が広がるというものである。

■日本が核武装するメリットは、現状、ほとんどない。

まず、北朝鮮に対してだが、『ならず者国家』の核には、核抑止は、機能しない。

テロリストも同様である。

中国・ロシアに関しては、確かに長期的にみて、近隣の関係不透明な国家が核保有することは、両国のナショナル・セキュリティにおいては、マイナスであろう。

しかしながら、日本が、核を少数もったところで、MADは、機能しない。政治機能が東京に集中するような国家では、意思決定プロセスに支障をきたすし、又、核は、どこに置くのだろうか。イギリスのように、原潜を主力とするという方法もあるが、かなりのダミーが必要で、そのような予算は、どこから捻出するのだろうか。極めて非合理的である。

アメリカに関しては、仮に、容認され、米軍のプレゼンスが減るとなると、コストもさることながら、リスクも大きい。北朝鮮・中国・ロシアが最も脅威と認識するのは、米国の強固な後ろ盾のある日本である。

また、法的にも、憲法や原子力基本法、NPTと越えなければいけないハードルも高い。

意思表示が外交カードになるという見解もあるが、カードにもマイナス・プラスがある。(一般的に外交カードと言えば、プラスを指すが)

現在のようなグローバル化、相互依存の高い国際関係においては、ゼロサム的な利得・損出・効果は考えずらく、あくまでも、メリット(利得・プラス効果)ーデメリット(リスク・コスト)の相対的な比較によって、決定される。

日本の核武装は、上記に記してきたが、リスクとコストが極めて高い。それゆえ、日本のナショナル・セキュリティをインセンキュリティにさせる。

アメリカでは、超少数派だが、D.フラムや、クラフトハマーなどのネオコンが、日本の核武装を積極的に容認しているが、彼らの見解は、リスクとコストを考えない、むしろ、アメリカ外交の中心課題(WMDの拡散・テロの脅威への対処)に衝突する。とても、戦略的なものとは言えない。

以上のように、日本の核武装は、北東アジア、国際社会にとって、リスク・コストが大きいだけでなく、ただでさえ、外交の幅と柔軟性が少なく、軍事的にも縛られている、日本自身のリスクとコストは、それ以上に大きい。(メリットよりデメリットの方が大きい)

最後に日本が核保有をするかどうかは、ワシントンが決めるのである。

もちろん、国際情勢、日本の世論、政権の反応を見てであるが。

ただ、現状、ワシントンの世界戦略には、それはないだろう。

日本は、日米同盟の双務性を形式的にも、実質的にもあげていくべきだろう。

追記:残念なのは、議論のレベル、論点、射程を明確にし、それを国民に提示した上で、議論がなされないことである。

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