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2006年11月15日 (水)

北朝鮮の核実験と日米同盟

北朝鮮の核実験が行われてから、ある程度日にちが経ったが、現在、どのような現実に直面しているのだろうか。

北朝鮮の核実験の意図は、明らかに、技術的なものではなく、周辺諸国や特にアメリカ、又、自国の体制維持のための、政治的・心理的効果を狙ったものであろう。

アメリカの行った、イラク戦争が皮肉にも動機になっている。それは、特に、アメリカが『ならず者国家』と名指した国ぐにに次の二つの選択・決定を強要した点である。

①WMD(核兵器など)、その生成物質、技術の完全な放棄(穏健的・妥協策)

②WMDの保有(強硬的・敵対策)

北朝鮮・イランは、この②を完全に選択・決定してしまった。

もちろん、北朝鮮の核実験には、アメリカの金融制裁が効果的であった要素もある。

以上が簡潔な北朝鮮の核実験の意図を考察したものである。

それは(北朝鮮の核実験は)、現在、2つの新しい現実を生み出しただろう。

・第1の現実は、東アジアに関係する主要国の外交・緊密化を図り、国連安保理がより、重要な役割を持ったことである。

安倍総理への祝砲とも言えるが、総理就任後まもなくの訪中・訪韓は、『靖国問題』などの歴史問題という、関係悪化の要素を外交の表舞台から消し、北朝鮮問題に対して、より、各国の国益上の課題を討議する機会を増やした。

また、安保理においても、短時間に非難・制裁決議を全開一致で得るなど、妥協の産物とはいえ、多国間協調路線が見て取れる。

それに加え、アメリカ、コンドリーザ・ライス国務長官の東アジア関係諸国訪問は、効果や成果はともかく、東アジアを中心として、これまでに類を見ないような多国間外交が関係各国で行われたことを表している。

・第2の現実は、北朝鮮の核保有が固定化したものしなければといけない事実である。

まず、確認しなければいけないのは、6カ国協議参加の6各国の大前提は、北朝鮮を崩壊させないという認識である。(考えにくいが、平和的なクーデターなどがあれば話は、別だが)簡単に書けば、戦禍もさることながら、難民流入や、経済的支援など各国の国益が絡む。

また、アメリカに関していえば、イラク問題、国内の財政・移民問題を抱えており、ブルッキングス研究所・シニアフェロー、M.オハンロンの述べる通り、アメリカは、北朝鮮問題を軽視してきた。つまり、戦略・政策形成がなされていないのである。ジョージ・タウン大学、ヴィクター・D・チャが述べるように(孤立化させるよりも、積極的に関与していく)、また、国務省筋が進める通り、強硬的なオプションを持ちながらも、エンゲージメントしていく路線転換が、早急に行われると考えている。対話路線の重視である。

このように、アメリカの軍事力の行使は、考えにくく、また、北朝鮮が核廃棄することも考えにくい。つまり、国際社会もそれだけの圧力はかけないだろうし、(米中の妥協が大きい要因になるが)アメリカも北朝鮮と、1994年のクリントン大統領期のようなバーターに応じることも考えにくい。

以上のように考察してくると、北朝鮮の核保有は、継続しそうである。

そうすると、日米間の脅威(認識)レベル・国益レベルに差がでてくる。つまり、日米の完全な利害の一致をみることはできない。(利害が対立するわけではないが)

アメリカにしてみれば、PSI構想をはじめ、北朝鮮の核兵器保有自体は、直接(北朝鮮のミサイルがアメリカ本土を射程範囲にできていない)の脅威ではない。むしろ、その拡散の方が、脅威レベルは高い。

逆に日本は、拡散も脅威であるが、北朝鮮の核兵器保有自体が直接(北朝鮮のミサイルが日本本土を射程範囲におさめている)の脅威である。

ここに脅威の認識のギャップがある。

日本が単独で北朝鮮に影響を与えることは、ほとんどない。

それゆえ、日米は、この脅威のギャップを北朝鮮に利用されないよう、日本への攻撃は、アメリカへの攻撃であることを、しっかりと北朝鮮に認識させなければいけない。

そのためには、ミサイル防衛をはじめ、より、緊密な日米の協力体制を構築しなければいけない。

また、日本は、東アジアにおける多国間の協調外交(マルチ)の枠組みを強化するとともに、イラク政策などにおける、アメリカへの協力(バイ)など、日米同盟が弱体化することは、絶対に避けなければいけない。

〈2006年『論座12月号』 田中明彦先生の論文に依拠するところが多い〉

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