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2006年11月30日 (木)

米欧関係の行方

この28日、29日、ラトビアのリガで、NATO首脳国、サミットが開かれた。

こちらが、NATOのHPである。この結果報告は、また、いづれエントリしたいが、今回は、9.11テロから、アフガン、イラク戦争を契機に注目された米欧の亀裂の事実関係と現在、今後の動向を少し考えたい。

■まず、事実関係からだが、前提として、第1に、冷戦終結後、国際システムレベルにおいて、アメリカの1極構造にあるということ。そして、情報・文化、経済力のみならず、軍事力においては、他を圧倒しているということである。

以上を踏まえた上で、簡潔に事実関係の経緯をみてみよう。

①ジョージ・W・ブッシュ大統領は、選挙中から、京都議定書や、ICC(国際刑事裁判所)に対して、非協調的な自国の国益重視の主張を打ち出していた。

②ジョージ・W・ブッシュ政権は、発足後まもなく、MD(ミサイル防衛)の推進、ABM条約の改訂または、解消に動き出す。

上記に対して、ヨーロッパのみならず、中露からも、警戒、非難の声が上がっていた。

しかし、9.11アメリカ同時多発テロが起こると、このような、非難の声は、忘却され、アンチ・国際テロの旗印のもとで、米欧は結束し、中露も同調する構図が浮かびあがる。

これが、国連安保理決議1368を全会一致で採択させ、アメリカは、非対称型の対テロへの戦争という新しい時代の戦争として、自衛権でもって、アフガニスタン(タリバン)を攻撃する。もちろん、フランス、ドイツをはじめ、NATO諸国も集団的自衛権のもとで、協力している。

しかしながら、イラク戦争に至る経緯においては、フランス、ドイツの猛反発に合い(各国、国益の絡む問題があるのだが)、国際社会の容認もえられないまま、有志連合という形で、非常にユニラテラルに戦争を遂行する。

特にこのイラク戦争をめぐる経緯をもって、’米欧の亀裂’が語られる文脈が多い。

ジョージ・W・ブッシュ政権の同盟諸国、国際社会への説明が充分であったとは思えないが、アメリカが一方的に国際協調路線を放棄したとも言えない。それは、サダム・フセインが査察継続に応じたのは、米軍の中東湾岸地域におけるプレゼンスを高めたためであって、これには、リスクもコストもかかる。その負担を軽減(少しでも肩代わり)しようという欧州諸国が、フランスやドイツがそれを申しでただろうか。

NATOのグローバル化に懐疑的なクリントン政権期の国務副長官で、現在、ブルッキングス研究所に所属する、ストローブ・タルボット氏は、イラク開戦前にフォーリン・アフェアーズに、次のような旨の論文を掲載している。

『NATO諸国の統一性が保てず、又、アメリカも欧州も独断的で、特に欧州加盟国は、アメリカの高圧的な態度に不快感を示し、アメリカが軍事力を行使するほどに、自国が脅威にさらさせると、憤っている。』

タルボット氏のこのような発言の背景には、コソボ紛争がある。タルボット氏は、アメリカの特使として、交渉にあたった人物である。(交渉は失敗に終わるが)しかし、ヨーロッパは、ヨーロッパの問題に対処できず、消極的であった、クリントン政権も、国内世論を無視できずに、コソボ空爆に踏み切る。この際、アメリカの軍事力が90%以上であったのである。(安保理決議のない人道的介入・干渉だが、これについては、また、エントリします。)

また、NATO加盟諸国において、重要論文とされたのが、ロバート・ケーガン論文である。

『欧州は、カント的な法の支配に基づく、穏健で、平和な世界を目指しているが、それが可能なのも、アメリカがホッブズ的な世界で、力(軍事力)によって、秩序と安定を保っているからである。』

つまり、ケーガン論文は、アメリカでも賛否両論あるものの、その新しさは、互いの世界観の違いを認めようということにある。

又、事実上、更迭されたラムズフェルド前国防長官の『古いヨーロッパ』発言だが、外交的には配慮に欠けると思う発言だが、アメリカの歴史学者、R.ホーフスタッターの反知性主義的なインプリケーションがある。言うまでもなく、この『反知性』とは、旧大陸・ヨーロッパ的な考え方という意味である。

ここまで見てきた中で、少なくとも2つのことが言えるだろう。

①EUやNATOの拡大に伴う、国際安全保障へのコミットへの課題

②米欧間の世界観(性格)の違い

■以上、簡潔に事実関係を追ってきたが、上記①②について、コメントしたい。

①に関してだが、EUやNATOの拡大によって、その役割は、当然、グローバルなものへと期待される。米欧関係の亀裂ばかりをみてきたが、対テロの脅威、大量破壊兵器・その生成物質・技術の拡散の脅威という点では、米欧は一致している。そして、情報面では、アメリカに頼ることも多く、相互に協調した方が有益であり、又、そうしている。経済的な面においても、テロリストの資金ネットワーク締結に向けて共同歩調をとっている。

また、アメリカの過度の軍事力への傾斜から軟化、ハードパワーが軋轢を起こしたことからのソフトパワーへの傾斜が考えられる中、アフガニスタンでも活動を継続中の上、カシミールやインドネシアなど、ヨーロッパ外の国際安全保障に積極的なコミットをはじめている。また、非加盟国をオブザーバーとしてむかえ、連携も模索中である。

以上のように、ヨーロッパ(NATO)は、アメリカとの情報面・経済面での協調が不可欠である。また、コソボでの苦い経験から、積極的に国際安全保障にコミットしている。(もちろん、これは、ヨーロッパ・EUのプレゼンスを高めるためかもしれないが)

管理人はさほど、米欧関係の悪化を危惧していない。今後、良好に向かうのではと楽観視している。というより、さほど、悪化してないとさえ考えている。つまり極端に言えば、亀裂というほどのものはなかったと考える。

②に関しては、その原因だが、アメリカは、ただでさえ内向きの大国と言われている。そして、ユニラテラルの振舞うことのできる国際環境にある。しかし、それが、どれだけ、リスクとコストが大きいものかを学習しただろう。つまり、ネオコンを始めとする過度の保守化が、対話の路線を軽視し、世界を画一的なアメリカ的な価値のみで判断、行動してきたところが多分にある。

一方、現在のヨーロッパは、EUをはじめとし、まさに、多文明との対話の過程にある。歴史的遺産を守りつつ、新たな共同体構築の過程なのである。

この双方のビジョンの違いが、心理的距離をとったのではないだろうか。

最後に新たな脅威に関して、米欧の協力は必要不可欠である。単純な対立(亀裂)、協調という2項枠組みで捉えることは短絡である。(本質的な要因を見逃してしまう)

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